日本の社会問題の一つとなっている「ひきこもり」。
それに対して、「仮面ひきこもり」という言葉があるのを知っているだろうか?
「仮面ひきこもり」とは、社会生活を営んでいるのに、実は「ひきこもり」と同じような心のメカニズムを持つ人たちのこと。そんな「仮面ひきこもり」について解説しているのが、『仮面ひきこもり あなたのまわりにもいる「第2のひきこもり」』(服部雄一/著、角川書店/刊)だ。
「仮面ひきこもり」の人間は、一般にいう「ひきこもり」と違って、会社に勤務しているなど社会生活を送っているが、内面では「ひきこもり」と同じように対人恐怖と不信感、孤独感を抱えている。そして、異性と親しくなれない、自分の子どもを愛せない、本当のことを言うのが怖い、などといった問題に悩まされているという。
ここでは本書から、「仮面ひきこもり」の一症例を取り上げ、「仮面ひきこもり」について紹介したい。
Aさんは31歳、独身、大手企業のエリート社員である。会社では人気者で、周囲の信頼も厚い。
そんなAさんだが、ある朝、プラットホームに立っていると、体が勝手に動いて電車に飛び込もうとしたという。そのときは駅の柱にしがみつき、事なきを得たAさんだったが、以来、プラットホームの前のほうに立つのが怖くなった。
それからしばらくたったある日曜日。ドライブしていたAさんは、海岸線のカーブで突然ハンドルを右に切り、ガードレールを越えて海に飛び込もうとした。車はもう少しで海に落ちるところだったが、必死にハンドルを反対にきったので助かった。
最近はこのような状態ばかりが続いているが、Aさんには死にたい理由が思い当たらないという。普段は明るく、笑顔の絶えないAさん。だが、カウンセリングしてみると、Aさんには誰にも見せない「暗いウラの自分」があることが分かった。本当は緊張感が強く、心の底では強い孤独感を抱えていたのである。
これは本書の17ページから18ページのエピソードを要約したものだ。Aさんのように、「仮面ひきこもり」の人は、働いていたり、主婦だったりして、一見「普通」の人に見える。だが、心のメカニズムは、実は「ひきこもり」と全く同じ。人格に二重性があり、人間不信、対人恐怖、感情マヒなどといった症状を抱えているという。
著者はこの「ひきこもり」のメカニズムは、幼少期の親との関係性に関係するのではないかと指摘する。「仮面ひきこもり」という言葉は、一見何の問題もなく社会生活を送っている人のなかにも、実は深い悩みや苦しみを抱えて生きている人がいることを示唆している。
「仮面ひきこもり」の特徴として著者が挙げるのは、「笑顔や何気ないフリで隠しているが本当は人が怖い」「その場しのぎをするクセがある」「決断できない。自分で判断できない」「人には二面性があると思う」「自己主張の強い人や外国人が苦手である」などといった項目。
あなたは当てはまるだろうか?
(新刊JP編集部)
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※本記事は、「新刊JP」より提供されたものです。