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世界銀行元副総裁・西水美恵子が語る、部下の「本気のスイッチを入れる」ための組織づくり

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世界銀行元副総裁・西水美恵子が語る、部下の「本気のスイッチを入れる」ための組織づくりの画像1※画像:『あなたの中のリーダーへ』著:西水美恵子/英治出版

 2011年3月11日に起きた東日本大震災の記憶は、多くの人々の中に残り続けていることだろう。あまりにも多くの命が一瞬にして奪われたこの出来事に、「生き方」に対する姿勢が変わった人は少なくないと聞く。世界銀行の元副総裁である西水美恵子氏の元には、まるで口を合わせたように「やっと本気のスイッチが入りました!」というメッセージが数多く届いたそうだ。

 「本気のスイッチ」とは、西水氏が近著『あなたの中のリーダーへ』(英治出版/刊)という本で書いた言葉だ。西水氏によれば、「本気のスイッチ」が入ると、「傍から見ればとんでもないとさえ思えることを、平気でするようになる」という。だからこそ、本当の変革を成し遂げることができるのだそうだ。例として、西水氏が人事体制を考える際に「本気のスイッチが入った」事例を紹介しよう。

 ある日、西水氏の優秀な部下の成績が下がり、目に見えて元気をなくしていたのを見て、その理由を聞いた。すると、その原因は部下の小学生の息子だった。学校での成績が下がり、海外出張で留守にするたびに寝小便をしてしまうという。それが心配で仕事に手がつかなかったのだ。

 仕事と家庭の両立ができず、世銀退職まで考えている部下に、西水氏はふと思いついてある提案をする。

「子どもを出張に連れていってみたら?」

 この提案は実現し、ある日その息子から西水氏の元に「出張報告書」が届いた。「お母さんが飛行機で飛び立った後のことがわかってうれしい。お母さんはインドの貧しい人たちを助けている。僕みたいな子が学校へ行けるように立派な仕事をしている。お母さんを誇りに思う。僕もお母さんのようになりたいから、一生懸命勉強します」。その後、親子の成績は共にうなぎのぼりとなったそうだ。

 その後、組織内で意識改革について話し合っていたとき、彼女がこのエピソードを披露したそうだ。それに刺激された部下たちは熱くなって話し合い、さまざまな変革を実践に移したという。この出来事から、西水氏の「本気のスイッチ」が入り、人事のすべてについて、その対象を職員に限定せず、その家庭にまで範囲を広げ、彼らが人間としての幸せを追求できるような組織づくりをすると決めたという。

 西水氏は、貧困の撲滅を使命とする世界銀行で23年間戦い続けてきた。世界中の数多くのリーダーたちとの出会いから、こんな夢が生まれたという。

「縁あったリーダーから学んだことを、母国の未来を担う人々に伝えたい」

 世界銀行を辞した後、在住しているカリブ海の島から帰国するたびに、日本全国を回っては各地の人々と語らい続けている。もちろん、被災地の東北地方を巡ることも欠かさない。そこで出会った一人ひとりの「本気のスイッチ」を入れ続けている。

BusinessJournal編集部

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