日本が海外に誇るべき文化の一つといえば「おもてなし」だ。
「ホスピタリティ」と呼ばれることもあるこの精神を、滝川クリステルさんが五輪誘致の最終プレゼンテーションで「おもてなし」という言葉で表現し、大きな話題となった。
「おもてなし」も「ホスピタリティ」も、その本質は、心のこもったサービスを相手に提供することだ。その意味で、今企業にも「ホスピタリティ」が必要とされていると言えるだろう。顧客満足度という指標が定着し、よりよいサービスを提供することが重要となっているのだ。
しかし、実際にお客様のことを第一に考えて、心のこもったサービスを提供できているだろうかと自問すると、必ずしも実行できていないと感じる人も多いだろう。
株式会社JTBコーポレートソリューションズはホスピタリティを提唱し、企業に「ホスピタリティ・マネジメント」の重要性を説き、それを経営に結び付けるコンサルティングを行っている。
お客様に対して素晴らしい対応ができる企業にするには、徹底した従業員教育の継続が求められる。当然、年単位の時間と莫大な費用がかかることになる。
しかし、企業の目的は「利益の追求」にある。ホスピタリティを追求するための教育のコストは、利益を圧迫するのではないか…。
このように、「どのようにすればいいのか分からない」「ホスピタリティは本当に利益に直結するのか?」という声も多い。
こういった悩みに対して、株式会社JTBコーポレートソリューションズは力強い答えを提示する。
「ホスピタリティの追求」と「利益の追求」は相反しない。むしろ、収益をあげるための手段としてホスピタリティが存在するのだと。
近年、マーケティングにおいて「ファンを集める」ことが重要とされているが、そのファンを生む装置こそがホスピタリティだ。特に贔屓客をつくりたい高価格帯の商品やサービスを提供する会社ほど、その必要性が高くなる。
では、利益をあげるためのホスピタリティとはどのようなものか。『歓喜のホスピタリティ・マネジメント』(株式会社JTBコーポレートソリューションズ/編著、ダイヤモンド社/刊)は、その原則を説明している。
ここからは、JTBコーポレートソリューションズのコンサルティングを受けて、ホスピタリティを高めることができた小田急不動産株式会社の例を取り上げよう。
■お客様が営業に加わる? ホスピタリティの浸透は何を生んだか
小田急不動産では、以前からお客様満足度アンケートを実施していたが、JTBコーポレートソリューションズのコンサルティングによってホスピタリティ度をチェックする内容を追加した。
すると、研修を受けた社員を対象に実施した自己評価と、お客様のアンケートの評価にはいくつかの項目で開きがあった。つまり、自分たちが思っていたよりホスピタリティの足りない部分があることが判明したのだ。
この結果を受けて、自分たちの行動を客観的に振り返り、加えて、「小田急」というブランドに対するお客様の期待の高さを指摘されると、社内で成績のよい営業マンこそがホスピタリティを持っていると考え、その行動を学んでいった。