現役の会社員でもある小林氏は、本書の中で30代のビジネスパーソン向けに、情報処理の「王道」について述べている。しかし、実際には高校生から50代まで広く読まれる内容となっており、話題を呼んでいる。
そこで、今回は小林氏に
「情報処理の考え方」
「これからのビジネスパーソンに必要なこと」
「インテリジェンスを磨く方法」
などについて聞いた。
–まず、本書を執筆された経緯をお聞かせください。
小林敬幸氏(以下、小林) 私の前著『ビジネスをつくる仕事』(講談社)を読んだ角川書店の編集者から連絡をいただき、執筆を依頼されました。現場のビジネスパーソン向けに本を書いてほしいという意図があり、現役の会社員である私にオファーがあったのです。テーマや構成は編集者と議論して固めていきましたが、ビジネス書にありがちな「こうすればうまくいく」という内容にはしたくなかったので、その点は編集者に了承してもらいました。また、現役の会社員という立場上、実際に経験した事例などにはあえて触れませんでした。
–執筆の材料は、どこから集めたのですか?
小林 学生時代に、政治学者で東京大学名誉教授の故・佐藤誠三郎先生のもとで、国家安全保障や情報の扱い方について学びました。それがきっかけで情報重視戦略やインテリジェンスへの関心が深まり、以後多くの書籍を読んだり、さまざまな場で知見を広めました。それらの経験は仕事で役に立つことが多かったので、若い人たちに伝えたいという思いで執筆したのです。
–想定読者を30歳前後のビジネスマンに設定した理由は、なんでしょうか?
小林 一般的に、30歳にもなれば一度は人事異動を経験していたり、ある程度のビジネス経験を積んでおり、自分を見つめ直して次のキャリアを考える時期です。どんな仕事も、基本的には情報を処理する能力が問われるので、その王道をじっくり考えてもらいたいという目的で、読者として30歳前後のビジネスマンを想定しました。しかし、実際、本書は40~50代の方にも読んでいただいています。
–読者からは、どんな反応がありましたか?
小林 うれしかったのは、50代の読者が「30代向けに書いたとあるが、50代が読んでも役に立ちます。高校生の息子に読ませても、おもしろいと言っていました」という感想を寄せてくれたことです。私の会社の副社長も50代ですが、やはり「おもしろかったよ」と声をかけてくれました。また、社外からは研究会などでの講義の依頼も入ってきています。
–装丁はビジネスノウハウ書のイメージですが、内容は単なるノウハウ本ではありません。
小林 本書は「一攫千金を狙う」「出世して社長になる」といった願望を満たす内容ではありません。本の中には実践編も書いていますが、その内容を実践することで、毎日の仕事が少しでもスムーズに進み、チームのパフォーマンスが上がるようになればいいと思っているので、そういう方向に活用してほしいです。