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すでに自力創薬の時代は終わったのか?

武田薬品、手元資金なしでも大型買収にひた走るワケ

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武田薬品、手元資金なしでも大型買収にひた走るワケの画像1武田薬品・東京本社(「ウィキペディア」より)
 国内製薬企業最大手の武田薬品工業。昨年、日本企業による海外企業の買収額としては歴代3位となる96億ユーロ(当時のレートで約1兆1100億円)で、スイスの製薬会社ナイコメッド社を買収した。過去の買収を含め、一時は2兆円あったという潤沢な手元資金のほとんどを使い果たしたとされるが、その後も海外企業の買収を続けている。旺盛な買収の背景には、自力で収益を支える画期的な医薬品を開発するのが、非常に難しくなったという事情がある。

技術・販路を求め、買収が止まらない

 8億ドル(約640億円)――武田は4月、アメリカの製薬企業URLファーマを買収すると発表した。その前にも、昨年末、がん分野の創薬研究を手がけるアメリカのベンチャー企業インテリキンを、約1億9000万ドル(約150億円)で買収すると発表している。ナイコメッド買収の資金に充てるため、約1500億円から2000億円の枠で、37年ぶりに普通社債の発行を決めている武田に、数千億円以上の大型買収を行う余裕はない。だが、必要な技術や販売経路などを求める買収には、依然として積極的な姿勢を崩さない。

 武田は、最近まで1つの薬で年間1000億円以上の売上高を持つ薬=ブロックバスターによって、順調な成長を遂げてきた。例えば、抗潰瘍薬「タケプロン」、高血圧薬「ブロプレス」、糖尿病薬「アクトス」、前立腺がん薬「リュープリン」が挙げられる。だが新薬は特許切れにより、同じ成分で価格が安いジェネリック医薬品が参入して、売上高を減らす。2年ごとに薬価改定がある日本では価格下落が緩やかだが、世界最大市場の米国では、新薬はジェネリックの参入で9割ほど売上高が減少するとされる。すでにブロプレス以外は特許が切れ、つい最近、特許期間が終わったアクトスも、もうすぐジェネリックが投入される。ブロプレスも今年、特許切れを迎え、ジェネリックの参入が近いといわれる。

ブロックバスターの「あと」が描けない

 特許切れの薬が出るタイミングで、新しいブロックバスターを開発完了していれば話は簡単だ。だが、世界中の製薬会社がこぞって開発競争に乗り出した結果、ブロックバスターの候補となるような疾患領域、例えば患者数が多くて根治せず、毎日薬を飲む必要がある高血圧や糖尿病などの生活習慣病の領域はあらかた開拓され、がんやアルツハイマーのように、新薬を開発することが難しい領域だけが残されているのが実情だ。武田はもともと生活習慣病分野に強く、自力での創薬でとりわけ苦労しているとされる。

 また、武田の場合、厳しい環境下でもブロックバスターの穴を埋める後継として開発した新薬が、とくに苦戦している。アメリカで投入した高血圧薬「イダービ」は予想より売り上げが伸び悩んでいる。糖尿病薬「ネシーナ」もFDA(米国食品医薬品局)から追加試験が求められてスケジュールが大幅に遅れている。ジェネリック投入を控えたアクトスは、フランスでぼうこうがん発生リスクの可能性が指摘され始めた影響で売り上げを落とした。大手製薬企業の関係者は、「武田は抗がん剤、睡眠導入剤など、新しく投入した薬がアメリカで売れていない。本当に大丈夫なのか?」と、ライバルにもかかわらず心配の声をあげている。

BusinessJournal編集部

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