最新パソコン自作 2012年 6/5号」
二番目は、01年、ADSL回線サービスの「Yahoo! BB」を始めたこと。あの時に孫さんがケンカした相手は、NTTだったんです。 NTTなんて通信業界でいうと政府みたいなもので、それを相手にケンカするなんて僕の感覚ではあり得ないことでした。その手法として、モデムを街頭でタダ で配ったりするあたりもすごかった。
三番目は、06年、ボーダフォンを約2兆円という金額で買収したこと。四番目は、3・11後、脱原発を唱えて「自然エネルギー財団」を設立して、東京電力に対して「原子力じゃなくて、太陽発電だろっ!」とケンカを売っていること。
こうした中、彼がテレビに出ているのを見ていて思うけど、「原子力反対」と言いながら、実は頭の中は本業の通信事業に早く戻りたいんじゃないか な。おそらく、auもiPhoneを発売することは事前に知っていたんだろうし、スティーブ・ジョブズは死んでしまうし、そのあたりは本業の通信事業には こたえたはず。今後は、いかにNTTとKDDIを怒らせずに、借金を返しながら基地局と宣伝と営業の投資をバランスよくエンジンをかけていくことができる かにかかっているでしょう。
そもそも僕と孫さんは「天才・西。神童・孫」なんて言われた時代もあって(笑)。最初に会ったのは、77年くらい。彼が松下電器に自分のところで 開発した電子翻訳機を売り込みに来てて、松下電器の人が引き合わせてくれた。気の強そうな男だなあというのが最初の印象でした。83年に、僕がビル・ゲイ ツや日本のメーカーと一緒に、MSXという家庭用コンピューターの統一規格を提案しました。それに対して、孫さんが別の規格を出して対抗してきた。だけど 彼は、その規格を取り下げる条件として、ライセンス料を安くしろと言うわけ。結果として、スペックを公開すること、ロイヤリティーを取らないことで決着し たことになっています。ソニーや松下に代わって、孫さんが僕を値切ったようなものです。そんなふうに、昔は競争相手だったけど、彼がヤフーに100億円投 資した頃からは、イメージとして、彼がアメリカ製のスポーツカーに乗って僕のポンコツを追い越していった感じですね。
孫さんのようなベンチャー精神の塊は、日本にはほかにいない。彼の仕事を大変評価するし、評価は年と共に上がってます。ただね、孫さんの周りの秘 書とか、取り巻きの人が威張ってるんですよ。それに孫さんは気がついてないんじゃないかな。昔は秘書に電話をかけたらすぐに会ってくれたけど、今は「いつ になるかわかりません」って。今電話してみようか? 孫さんの携帯に。ちょっと待って。(携帯を取り出して)出ないんだけどね、メッセージ残しとくの (と、携帯をかける)。