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ユニチカ、長期経営計画発表のとたん株価急落の理由

東レとユニチカ、“脱繊維”進める繊維業界の明暗を分けたもの

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東レとユニチカ、“脱繊維”進める繊維業界の明暗を分けたものの画像1ユニチカ大阪本社がある大阪センタービル
(「Wikipedia」より)
 ユニチカの2013年3月期第1四半期(4-6月)連結決算は、売上高が388億8000万円で、前年同期比マイナス12.7%、経常利益が5億6000万円で同マイナス73.7%と大きく落ち込んだ。経常利益の上期(4-9月)計画20億円に対する進捗率も28.0%にとどまり、今年5月に発表したばかりの経営ビジョン(長期経営計画「ビジョン2020」)の目標数字に早々と赤信号がともっている。

●構造改革の遅れで大手最下位に転落

 ユニチカは1889年(明治22年)に「尼崎紡績会社」として創業、123年の社歴を誇る繊維業界の老舗。1918年に摂津紡績と合併して「大日本紡績」に社名変更し、以降、69年に日本レイヨンと合併して現社名に変更するまで「ニチボー」の愛称で親しまれ、戦前から高度成長期まで繊維業界の象徴的存在だった。

 ところが、バブル崩壊の余波で経営基盤は一挙に揺らぐ。92年3月期の3915億6000万円をピークに売上高は下り曲線を描き続け、12年3月期連結決算では1746億6000万円まで減少、ピーク時の45パーセントに縮んでしまった。

 当期純利益も94年3月期から4期連続赤字、99年3月期に再び赤字、03年3月期と09年3月期も赤字を記録している。過去3期は赤字決算こそ免れているものの、10年3月期は減収、11年3月期と12年3月期は減収減益に陥っている。

 かつての名門企業も、近年は繊維大手5社最下位の席を温める存在になっているが、その原因は、事業構造改革の遅れだ。

 戦前から高度成長期にかけて日本経済牽引の一翼を担った繊維業界は、その後、安い中国製品との価格競争と国内需要減少に苦しみ、90年以降は繊維事業の縮小、機能繊維事業の拡大、医療材料・バイオケミカル等非繊維事業育成などの事業構造改革に取り組んできた。

●長期的視野で非繊維事業を育成した東レ

 例えば、業界最大手の東レは、機能性衣料「ヒートテック」を開発するなど機能繊維事業の強化を図る一方、炭素繊維、医療、液晶関連素材などの非繊維事業を育成してきた。

 この構造改革は「非繊維の開発には10年以上の研究機関が必要。ちなみに炭素繊維は30年間も累積赤字だった」(日覚昭廣社長)という長期的視野の下で、トップが不断の緊張感を持って成し遂げたものだった。

 その結果、12年3月期の売上高はユニチカの9倍の1兆5886億円に達し、価格競争に巻き込まれないビジネスモデルを確立している。

 一方、価格競争に巻き込まれて売上が下り一直線状態になったユニチカが、事業構造改革に着手したのは90年代に入ってからだった。慌てて、基幹事業だったナイロン繊維からの撤退、約1000人の人員削減などのリストラを実施したが、「時すでに遅し」で効果はなし。2000年にはその煽りで「東洋の魔女」の歴史を誇った名門女子バレーボール部が廃部に追い込まれた。

 それでも凋落は止まらず、09年3月期は6年ぶりの赤字に転落、140億円の純損になった。そこで10年度は役員報酬減額、管理職・一般社員の賃金カット、工場の閉鎖・縮小、再度の人員削減などの大規模リストラを実施、12年3月期まで減益傾向ながらも3期連続で黒字確保に至っている。

 この小康状態を「事業の選択と集中により、構造改革が予想以上に進んだ。次は名門復活だ」との勘違いで、安江健治社長が打ち上げた花火が「経営ビジョン」だった。

●根拠のない目標設定で、株の警戒売りが

 その数値目標がまた驚きだ。連結売上高3500億円、連結営業利益350億円となっており、8年間で売上高を倍増(12年3月期実績1747億円)し、本業の儲けを示す営業利益を3.6倍増(12年3月期実績96億円)にしようという、大変野心的な目標だ。

BusinessJournal編集部

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