民主党への期待の裏返しと、自民党への長らくの不信感……離党するあまたの議員や、乱立する政党など、複雑すぎる昨今の日本の政治。国会新聞で編集次長を務める宇田川敬介氏が、マスコミ報道という観点から、異論・反論交えて解説するーー。
2012年12月16日、第46回衆議院議員総選挙の投開票が行われ、第二次安倍晋三内閣が誕生、年が明けた現在、その体制下で政策が進行している。
今回の選挙は、民主党が10年7月11日の参議院選挙で大敗し、「ねじれ国会」の運営に失敗。その挙げ句、マニフェストを守ることなく、同時に消費税増税などを行ったことから、国民には「民主党に裏切られた」という考えが大きく広まり、民主党が惨敗したのだ。その結果、民主党が前回の選挙で否定された自民党と公明党で3分の2に当たる320議席を超える議席となり、離党者が相次いだ民主党も改選時230議席から57議席となったのである。
さて、その選挙結果に対して、マスコミ報道はこぞって「自民党が勝ったわけではなく、民主党が負けた選挙」という報道を行ってきた。
16日午後8時から、NHKを含むすべてのテレビ局が選挙の開票速報を行った。しかし、日本テレビ系列だけ『TOYOTAプレゼンツFIFAクラブワールドカップ ジャパン 2012』の決勝戦を放送した。他局がすべて選挙特番であったのに対して、これはなかなか面白かった。この文章を読む人の中でも、選挙特番に飽き飽きしていた人も少なくなかったのではないか?
実際に、今回の投票率が59%だったということは、選挙に興味がない人が40%いるということになる。『クラブワールドカップ』の視聴率が13.1%だったが、日本テレビ系列が、その40%のうちの多くの注目を集めたことは間違いない。もちろん日本テレビ系列も、視聴率を狙ったわけではなく、FIFAとの契約の関係もあったと思うし、反対に、開票速報をやるべきだという局内の圧力も大きくあったのであろう。そのために、サッカーの画面を少し小さくして、余白で開票速報の結果や文字情報を流していた。
ただ、日本国民のほとんどが、そうした報道体制のほうがよいと感じていたのであろう。実際に日本テレビは、結果が出た午後10時以降にしっかり選挙特番を組み、今後の政治の動きや政局に対する議論などが報道されていた。
コレを見て私は、報道とは本来こうあるべきであると思った。
まさに投票が締め切られたばかりの午後8時、開票も行っていないうちから、誰が当選した、誰が落選したという、選挙の結果だけを見て、何が面白いのか。まだ開票もおこなっていないのに、自民党の当選確実候補者が100議席を超えて出されるという報道は、「出口調査」といわれるマスコミ独自のインタビューによって行われるものであり、各局の出口調査の答え合わせのようなものだ。
それでも、当選の報に喜びの声をあげる候補者、または思わぬ敗戦で議席を失った議員の敗戦の弁、そして各政党党首の話を聞くというのは、マスコミにおいて「当事者の生の声を伝える」という意味で目的を果たしているかもしれない。