に頼らない 勝ち組ファッション
企業の新常識』
著:齊藤孝浩/中央公論新社
ユニクロ、しまむら、ZARA、H&M、街で見かけるおなじみのファッションチェーン。
安さを売りものに成長して来たように思える各社でも、実は価格競争だけに陥らない、緻密な販売戦略を立てているからこそ勝ち続けているものです。
商品にシーズンがあって、そのたびに流行もめまぐるしく変わるファッション業界は、常に「売り逃し」と「過剰在庫」に直面しているリスクの高いビジネスのひとつ。
今回は、『人気店はバーゲンセールに頼らない 勝ち組ファッション企業の新常識』(齊藤孝浩/著、中央公論新社/刊)から、着実に売上につなげている各社の知恵をご紹介します。
■ZARAは売れなかった商品情報を重視する
どんな企業でも最も注目するのはよく売れている商品でしょう。いわゆる売れ筋商品をどれだけ売って計画を達成するかといった販売戦略が練られるものです。ところが、ZARAの場合、売れた商品を分析するよりも、むしろ顧客が試着をしたにも関わらず購買に至らなかった商品に注目します。それらの商品をどう改良したら売れる商品にできるかを考えることが店舗とスペイン本国の商品企画担当の重要な任務のひとつなのです。
売れる商品を売り続ければ、いずれ飽きられる。次の売れ筋商品のヒントは、「顧客が興味は持ったが買わなかった商品の中にある」と考えます。ZARAではデータで読み取れる売れ筋情報よりも現場にいなければ判らない、顧客の買わなかった商品情報と改善策を本部に報告するのが店長の重要な任務のひとつなのです。
■しまむらが各店に品番あたり各色各サイズ一点しか入れないワケ
売れ筋商品を切らさないように十分在庫を用意しようとするのが多くのチェーンストアの常識ですが、しまむらは逆に「売り切れ御免」を原則としています。その理由は、しまむらが出店している小さな商圏(地域)で限られた客数に同じ商品をたくさん販売するよりも、多くの新商品を毎日店頭に並べる方が来店頻度も高まり、お客さんに喜ばれると考えるからです。また、限られた地域で同じ商品を大量に販売すれば、顧客が街で出会った人と服が被ってしまうこともあり得ます。かつて「ユニばれ」「ユニ被り」という言葉が嫌がられたように、顧客に気まずい思いをさせないという配慮も在庫一点主義にこだわる「しまむら流」なのです。
■ユニクロは週単位に販売計画を立て週単位に軌道修正する
多くの企業が年間計画や半期計画を月予算に配分して計画を実行して、進捗管理をしていることでしょう。シーズンがあり、販売期間の短いファッション販売においては、月単位で行動した時の1ヶ月の遅れを取り戻すのは至難の業です。
これに対して、ユニクロは取扱商品すべてについて週単位で1週間あたりの売上目標を立ててシーズンに臨みます。同社は計画の乖離が発生するや否や週単位でいち早く生産調整や週末限定値下げなどの販売促進策をとり、手遅れになる前に売上の軌道修正を行うのです。
月単位で行動している他社と比べて計画達成の精度が高まることは言うまでもありません。
■「月曜日は売れない」のウソ
多くの小売業が週の初めに販売戦略を立て、大きな売上が望める土曜日日曜日に向けて実行するのが常識です。そんなサイクルで行動していると、逆に週明けの月曜日が手薄になり、売り逃しを起こしていることも少なくありません。
これに対して、勝ち組企業はむしろ月曜日に新商品を店頭に並べることによって、一般的には売り逃しがちな週の初めの取りこぼしも防ぎます。
手薄であるのを棚に上げて、「平日はあまり売れないもの」と考える業界他社との差は歴然です。
このように、勝ち組ファッション企業各社の戦略は、業界の常識を疑ってかかり、見直すきっかけになりそうです。
本書には流行に左右されやすいファッション業界だからこそ発達した販売戦略や在庫管理や購買心理への配慮の方法が、沢山の実例を交えて取り上げられています。
今売れている商品が半年後には全く売れない、仕入れた商品はその季節内に売りきらなければならないという厳しい環境で培われた知恵は、他業界にとっても参考になるものが多いはずです。
(文=新刊JP編集部)
※本記事は、「新刊JP」より提供されたものです。
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