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ビジネスマンを惑わす、自己啓発のウソ・ホント 第5回

変われない人の共通点とは?決断力より重要な「否定力」「根拠なき自信」

文=鈴木領一/コンサルタント

変われない人の共通点とは?決断力より重要な「否定力」「根拠なき自信」の画像1「Thinkstock」より
 出版不況の最中、堅調な売り上げを続けているのがビジネスマンなどに向けた「自己啓発本」というジャンル。「成功するための秘訣」が収められた本を繰り返し読んでは、いつまでたっても成功しない自分に不甲斐なさを感じている人は少なくないはずだ。変わらない自分のどこに問題があるのか?

 そこで、自己啓発理論を研究しつくしたビジネス・プロデューサーの鈴木領一氏が「自己啓発」「能力開発」の本質をレクチャー。話題の書『100の結果を引き寄せる1%アクション』のエッセンスを交えながら、「自分が求める成果を出すために、本当にやるべきこと」をお伝えする–。

 成功するには「決断力」が必要だ、と言われますが、そんな言葉を百万遍唱えても「決断力」が身につくはずがありません。

 決断のメカニズムを理解していないから、「決断力が大事」としか言えないのです。

 では、どうすればいいのか? 結論を先にいえば「否定力」が大事なのです。恋愛のケースから、そのメカニズムを解説します。

 私はビジネスマン向けのコーチングをすることが多いのですが、時に女性のコーチングをさせていただくと、高い頻度で恋愛相談となります。結婚したい、DVの彼と別れたい、不倫関係を解消したいなど、数多くの恋愛相談を受けてきました。アドバスをして変わらない人の特徴を観察していると、全てのケースに共通する“あること”を発見しました。

 それは、「現状を否定しない」という共通点です。結婚せずに独身でいる現状、彼からDVを受けている現状、不倫をしている現状……口では「早く結婚したい」「彼と別れたい」と言っていますが、実は現状を受け入れているのです。

 結婚したいと言っている人は「独身も気楽でいい」と思っており、彼と別れたいという人は「彼とは別れたくない」と心の奥で思っていました。そのように考える人は、口で何を言おうが、結局、何も行動せず、現状は何も変わりません。

 現状を否定する「否定力」がないと、現状を変えるための「決断力」を持てません。決断力の前に、否定力が必要なのです。

 これはビジネスでも同じです。

脳内で起こる脳細胞群同士の「否定合戦」

 独立して会社を起こしたい、と言いながら会社員を続けている人は、「会社員のほうが安定していい」と本心では思っています。私は起業塾などで講師を依頼されてお話することがあります。その際に必ず事務局に質問することがあります。それは、「塾生で実際に起業する人はどれくらいですか?」という質問です。すると判で押したように同じ答えが返ってきます。

「5%くらいですね」

 5%。これは一般的な数字と変わりません。起業塾に通っても起業する確率は高まらないのです。その理由が、「否定力」の欠如にあると、私は考えています。

 起業塾の塾生に「いつ独立する予定ですか?」という質問を投げかけても明確な答えを返す人は稀です。ほとんどの人が、「もっと起業の勉強したい」と答えます。つまり、「勉強のほうが楽しい」と本心では思っているわけです。起業塾のリピート率が高い理由はそこにあります。起業塾のリピート率が高いとは、冷静に考えると実に滑稽なことです。

 自己啓発セミナーなどでも、「成功したい」と口では言いながら何も行動せず、ずっとセミナーに参加するばかりの人がいます。リスクを負うより「自己啓発のノウハウを学ぶのが楽しい」と考えているからです。行動もせずに勉強ばかりしている現実を「おかしい」と否定できないのです。

「否定力」がなければ「決断力」が生まれないというメカニズムは科学でも解明されてきています。コーネル大学のトーマス・D・シーリー博士はミツバチのコロニー(集団)が一つの決断、例えば新しい巣への移住を決める際に、異なる意見を持つミツバチの動きを打ち消す刺激を出して一つの答えを導いていることを発見しました。それと同じメカニズムが脳内にもあることが分かったのです。脳内の脳細胞群同士でも意見の打ち消し合いが行い、結果、一つの脳細胞群の意見が残り、それが「決断した」という結果になるのです。

 分かりやすく説明しましょう。

 あなたがランチにラーメンを食べるかカレーを食べるか悩んでいたとしましょう。その時、脳内ではラーメンを薦める脳細胞群(A)と、カレーを薦める脳細胞群(B)があります。AはBの活動を抑える信号を出し、BはAの活動を抑える信号を出しています。つまり、ラーメンを食べたい脳細胞群は「カレーは嫌だ」という信号を出しており、カレーを食べたい脳細胞群は「ラーメンは嫌だ」という信号を出しているのです。

 そして、相手の脳細胞群の活動を打ち消したほうが勝ち残り、その意見が「決断」となるのです。あなたがランチで「カレーを食べる」と決断したなら、

「ラーメンを食べたい」という脳細胞群の活動を抑えきった=否定しきったからです。

 決断のメカニズムは、「否定」によって動きます。

現状否定は自己否定なのか?

 あなたが「結婚したい」と思っているなら、「一人の生活は嫌だ!」とキッパリと否定しないと、合コンに行ったりお見合いしたりという決断ができません。

 あなたが「起業したい」と思っているなら、「会社員で終わるのは嫌だ!」とキッパリと否定しなければ、商品を作ったり営業を始めたりする決断ができません。

 さらに、最も重要なことがあります。それは、現状を否定することは自分を否定することではない、ということです。

 私がコーチングで、「現状を否定しなければ決断できませんよ」とアドバイスすると、現状を否定するのが怖い、という反応を示す人がいます。現状を否定することと、自分を否定することを混同しているからそのような反応になるのです。

 決断を促す「否定力」とは、「素晴らしい私が、このような現状はおかしい」と考えることです。結婚したければ、「私のような魅力的な人が、一人でいるのはおかしい」と否定力を使ってください。起業したければ、「私のようなユニークな人間が、ずっと会社員でいるのはおかしい」と否定力を使ってください。

 自分が魅力的であるかユニークであるかの論拠は必要ありません。根拠のない自信でいいのです。私が出会ってきた成功者は、みんな根拠のない自信を持っていました。しかも成功するはるか以前から。そして成功者は、全員、現状を否定していました。肯定したら衰退が待っていることを知っているからです。

 私は決断力がない、という前に、否定力があるかどうかを確認してください。今の現状は嫌だ、とキッパリと自分に言い聞かせるのです。自分は価値ある人間だと強く肯定して。

鈴木領一/コンサルタント

鈴木領一/コンサルタント

 思考力研究所所長。行政機関や上場企業の事業アドバイスをはじめ目標達成のためのコーチングも行っている。プレジデント誌などビジネスメディアへの記事寄稿多数。また100の結果を引き寄せる1%アクション(サイゾー刊)は、氏のコーチングメソッドを初公開した書籍で、主婦から経営者まで幅広い層に支持されロングセラーとなっている。また、出版プロデュースの活動も行い、代表作には小保方晴子氏の『あの日』(講談社刊)がある。

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