の本命シナリオ』(カンゼン/吉田恒)
その一方で、日本政府と地方自治体を合わせた正味資産(資産 – 債務)は、債務が資産を約49兆円上回るという債務超過の状態。これは同種統計を取り始めた1969年以来初めてのことで、資産を全部売り払っても借金が返済できないということを意味している。ギリシャは債務がGDP比160%に達した時点で破綻したが、日本の債務はすでに約200%と高い水準にある。
厳しい国内財政状況の中、この「円安」状況はいつまで続くのか。そうした為替動向は社会にどんな影響を与えていくのか。
「2000年ITバブル崩壊」「02年・円急落」「07年円安バブル崩壊」などマーケットの大相場予測をことごとく的中させ、今年4月に上梓された自著『これから来る!「超円安」・「超株高」の本命シナリオ』の中でも、「2016年まで株高・円安は続く」と断言している国際金融アナリスト・吉田恒氏に、「今私たちがハッキリと知っておきたい為替のホンネ」を聞いてみた。
●「円安トレンド」が2016年まで続く理由
–素朴な質問からです。この「円安トレンド」が2016年まで続くと考えていらっしゃる理由を、わかりやすく教えてください。
吉田恒氏(以下、吉田) 過去20年間で4回、ドル高円安という局面がありましたが、最も長く続いた期間は3年4カ月でした。1995年から始まった円安です。95年は1ドル80円までの円高が進み、それが反転した局面でした。80円、つまり100円を超える円高のことは超円高と呼ばれていましたが、その超円高が反転したら、過去最長3年4カ月の円安になったわけです。
今回の円安スタート時は1ドル75円でした。なので今回も100円を超える円高であり、超円高と言えます。前回の超円高の時も、その反転局面では最長の円安を記録しました。今回も同様なので、第一次超円高の反転局面並みに長い円安になると予測することができます。
難しい理屈はいっぱいありますけど、簡単な言い方をすると「超円高が反転したあとの円安の期間は長くなる」のです。第一次超円高後の円安が3年4カ月続いたのだから、第二次超円高後の円安はもっと長くなってもおかしくない。史上最長の円安になる可能性すらあると考えています。
このように僕は考えていますが、円の下落率やドルの上昇率でいうと、今回が過去最高になるとは思っていません。ちなみに過去最高のドル上昇率では、ドルはその上昇期間中に最大で8割も上がっています。今回、75円からもし8割上がったら130〜140円になりますが、僕はそうはならないと思っています。ただ過去のドル高円安局面において、平均的にはドルは4割上がっているので、今回もその平均以上にはなると考えています。具体的には、75円からの4割を超える5〜6割程度のドル高と考えると、120円くらいにはなると考えてます。
–「円安トレンドは短命に終わる」と評する専門家の方もいらっしゃいますが。
吉田 5月上旬の日本経済新聞にも「円安はあと1年で終わる」という見方が載っていましたね。こうした発想のベースにあるものは、アメリカの金利動向に関する見方です。
例えば07年に1ドル124円までいった前回の円安ですが、その時には日米の金利差が大幅に開き、アメリカの金利が円の金利よりもすごく高かったことで、124円までのドル高円安になりました。
ところが今のところ、アメリカの金利も日本の金利も低く、金利差がほとんどない。この金利差が開かないとドル高円安にも限界があるので、彼らは「07年のように120円まで行くなんて到底無理で、せいぜいあと1年で終わるでしょう」という見方をしています。
とりわけドルをはじめとする外貨の金利があまり上がらず、日米の金利差が広がらない。これが、円安が短命に地味に終わるという見方の基本的な論拠となっています。
僕がそうならないと考えているのは、アメリカの金利がすごく上がると思っているからです。金利差が大幅に開いて、超円安になると思ってるんですね。