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吉田潮「だからテレビはやめられない」(6月11日)

“新鮮な”深夜トーク番組、嘘くさい芸能人に飽きた人を魅了する“ユルさ”“破壊力”

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『オトナの!』公式サイト(TBS HP)より
 主要なテレビ番組はほぼすべて視聴し、「週刊新潮」などに連載を持つライター・イラストレーターの吉田潮氏が、忙しいビジネスパーソンのために、観るべきテレビ番組とその“楽しみ方”をお伝えします。 


 深夜のトーク番組が面白い。昼間のぬるいトーク番組は、すべて番宣にしか見えない(実際にそうなんだけど)今、深夜枠のトーク番組は非常に質の高い内容である。

 ひとつは、『オトナの!』(TBS系)である。いとうせいこう&ユースケ・サンタマリアがゲスト(男性)を招き、「大人の○○」といったテーマでトークを展開する番組だ。いとうせいこうのソツのない意地悪さと、ユースケの他人に一切興味を持たないユルさが丁度いい塩梅で、ゲストも心底リラックスして話しているように見える。あえて「大人の~」という門戸を広げた質問だからこそ、理解できる人だけ理解すればいいネタとして持論を展開できる。酒飲みたい人は飲みながら、タバコ吸いたい人は吸いながら、雰囲気のいい店で、ただしゃべる。つくりこまれていない風の画ヅラが心地いい。 

 また、人選がなんともいえずシブイ。『A-studio』(TBS系)や『徹子の部屋』(テレビ朝日系)には、けっしてできない人選。シンガーソングライターの岡村靖幸やら劇作家のケラリーノ・サンドロヴィッチが出てきた時には、思わず痺れた。普段あまりテレビで観ることのない人を地上波キー局で観られるのは非常にありがたい。ムロツヨシや大倉孝二など、テレビドラマで名脇役の俳優たちがこっそり出てくるのもたまらない。アーティストなど「非・芸能人枠」も充実している。漫画家・浅野いにおの話はすこぶる面白かったし、今後もこの枠をぜひ増やしてほしい。

 もうひとつ、深夜の絶品トーク番組がある。『久保ヒャダ こじらせナイト』(フジテレビ系)である。『モテキ』の作者で漫画家・久保ミツロウと音楽プロデューサーのヒャダインが繰り広げる「こじらせトーク」で、不定期ながらも先日3回目の放送を迎えた。

 久保のあふれ出る脳内妄想(これはちょっと厄介だが)とハイセンスな一言斬りがスゴイ。空気を読み、予定調和(しかも面白くない)を重んじる芸能界とテレビ界には今まで存在しなかった破壊力である。ヒャダインもその破壊力をやんわりと受け流しながらも、ちょいちょい爪痕を残す。ラジオ番組に近い自由度とテンションがあり、そこで発揮されるふたりの類まれなる才能は、もはや分類不能。レギュラー化しないかなと思っている。

 トーク番組ではなく討論番組だが、『ニッポンのジレンマ』(NHK Eテレ)もひそかに楽しみにしている。社会学者の古市憲寿をメインに、若き評論家や専門家たちが日本の問題点について話し合う番組だ。出演者のほとんどが20〜30代で、頭ごなしに人を叱りつけるようなオジサンやオバサンはひとりも出てこない。激昂して暴れ出す大島渚とか浜田幸一(ハマコー)を懐かしいと思っちゃうくらい、知的で温和で賢い人々ばかり。

 皆さんカタカナ用語を頻発するため、ちょっとウザイ印象もあるが、それはたぶん私が老いている証拠なのだろう。討論自体は穏やかで、賢い人向けの意見交流会といったところ。でも、「若くて賢くて問題意識のある人がちゃんといるんだなぁ」と確認するには、いい番組だ。 

 深夜のトーク番組というくくりでまとめようと思ったのだが、結局のところ、今の私は「非・芸能人枠」に魅力を感じているのだろう。大人のシガラミで“がんじがらめ”のタレントの嘘くささに辟易しているし、芸人がこぞって内輪トークを広げるのにも飽きている。おバカを売りにしたB級タレントの行く末とか、質の悪い大量生産アイドルの受け皿番組とか、もうおなかいっぱい腹いっぱい。新鮮味をください。その一言に尽きる。
(文=吉田潮/ライター・イラストレーター)

●吉田潮(よしだ・うしお):
ライター・イラストレーター。法政大学卒業後、編集プロダクション勤務を経て、2001年よりフリーランスに。「週刊新潮」(新潮社)、「ラブピースクラブ」(ラブピースクラブ)などで連載中。主な著書に『2人で愉しむ新・大人の悦楽』(ナガオカ文庫)、『気持ちいいこと。』(宝島社)、『幸せな離婚』(生活文化出版)など。カラオケの十八番は、りりぃの「私は泣いています」、金井克子の「他人の関係」(淫らなフリつき)など。