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Winny開発者・金子勇の死を悔やむ、識者たちの見解…ネットをめぐる問題提起再び

文=blueprint

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Winny開発者・金子勇の死を悔やむ、識者たちの見解…ネットをめぐる問題提起再びの画像1『Winnyの技術』(アスキー/金子勇)

 ファイル共有ソフト「Winny」を開発した、プログラマーの金子勇氏が亡くなったとの情報が6日深夜、Twitterで拡散された。当初は情報元が不明だったことから、ネットでは「デマではないか」と疑う声も多く見られた。ところが、金子氏の担当弁護士である壇俊光氏が7日、訃報を伝える記事をブログに投稿。金子氏が6日午後6時55分、急性心筋梗塞のために42歳で死去したことが公式に伝えられた。

 この訃報を、朝日新聞デジタル版は8日配信の記事で、金子氏の簡単な経歴とともに紹介している。記事によると、金子氏は2002年にWinnyを開発し、無料で公開。ユーザーの支持を集めるとともに、ソフト開発の実績を評価され、東京大学院の助手にも採用されている。

 その一方で、違法コピーを可能にしたとして、04年に著作権法違反幇助に問われ、一審の京都地裁では有罪判決を受けた。しかし、二審の大阪高裁では逆転無罪判決が言い渡され、11年に最高裁で無罪が確定していた。

 このほか、日本経済新聞と毎日新聞も8日の朝刊で金子氏の訃報を伝えたが、扱いはごく小さなものだった。しかし、ネットでは多くの著名人が金子氏の早過ぎる死を惜しんでいる。いたずらに著作権侵害を助長したのではないか、あるいは全世界的に広まったSkypeのように、ビジネスシーンでも大きな可能性があるP2Pの技術をアンダーグラウンドなものにしてしまったのではないか……などの大論争を巻き起こした金子氏だが、追悼の言葉には、その取り組みやプログラマーとしての才能を高く評価する声が並んだ。

 慶応義塾大学環境情報学部長で、情報工学者の村井純氏は7日、「日経コンピュータ」(日経BP社)の電子版に追悼コメントを寄せた。村井氏は「ソフトウェア開発者として極めて貴重なパイオニアでありヒーローでもありました」と金子氏を称え、「金子勇さんの残された技術と背景になっていた精神と勇気を理解し、発展させ伝えていくことが使命」と、強い決意を述べている。

 また、ヤフー株式会社ID本部長で、政府CIO補佐官を務める楠正憲氏は7日、Twitterで「日本は貴重なソフトウェアの天才をひとり失った」と発言。さらに、「金子勇さんが短い生涯の貴重な時間を法廷闘争に費やさざるを得なかったことは本当に残念。僕らはこの理不尽な日本を変えられるのか」と、Winnyをめぐる裁判について疑問を呈するツイートも投稿している。

●革新的なビジネス創出の可能性も

 オープンソース開発者でブロガーの小飼弾氏は、高裁で無罪判決を言い渡された後に、金子氏と交わした会話をブログに投稿している。小飼氏が「無罪判決は正しいけど、正しい以上に、まだ『被害者』が少なく『被害』が小さかったから正しい判決を出す余裕があったともいえる。被害が閾値を超えたら、社会が『正しさ』に留意する余裕も吹っ飛ぶ」と話すと、金子氏は「だからきちんとデバッグしたかった」と答えたという。

 このエピソードについて、小飼氏は「彼にとって、自ら造った道具の問題は、自らそれを改良することによって解決する以外の答えはありえないのだ」と述べたうえで、「彼自身が、刃だった。それも国宝級の技物。あの頃に社会の風雨から彼を護る鞘がなかったのが悔やまれる」「金のごとく命が譲渡可能なものであったらよかったのに」と、金子氏の死を悼んだ。

 ITジャーナリストの佐々木俊尚氏も6日、Twitterで金子氏の訃報に触れて、「今思うとあの事件は、その後のライブドア事件やその他諸々につながる『ネットの論理』と『オールド日本社会の論理』の最初期の衝突であり、いまにいたるさまざまな要素が詰まっていた」と、裁判当時を振り返っている。

 一方、そのなかでビジネスの側面から後悔の念を吐露したのは、ライブドア事件で服役し、今年3月に仮釈放された堀江貴文氏だ。経済評論家・池田信夫氏の「金子勇さんは歴史に残るイノベーターだった。京都府警がP2Pを敵視しなければ、日本からSkypeのような革新的なビジネスが出た可能性もあった」というツイートに応えるかたちで、「我々経営者も彼の造ったサービスを上手く商用化する流れをつくるべきだったかもって後悔してる」とつぶやいている。

 天才プログラマーが残した多くの問題提起。通信技術と著作権、ネットの倫理、新しい技術をどう受け入れるべきかなど、金子氏の死を契機に、まずはネット上で再び議論が活性化しそうだ。
(文=blueprint)

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総合カルチャーサイト「Real Sound(音楽・映画・テック・ブック)」の運営や、書籍や写真集の発行、オウンドメディアの制作支援など“編集”を起点に様々な事業を行っている。
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