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ブラック企業アナリスト・新田龍「あの企業の裏側」第11回

ゆうちょ銀行、ブラックな実態〜多発する個人口座消失&顧客情報紛失事故、社員の横領…

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 その後C氏は遺品から、父親名義の4通の通帳を発見した。解約されていたとはいえ、内容について調査すべくゆうちょ銀行に口座照会をかけたところ、「4つのうち1つだけが存在していた」という回答であった。その1カ月後、解約前の期日にさかのぼって再度照会をかけたところ、こんどは「(口座は1つも)発見できませんでした」という、絶対にありえないはずの回答がゆうちょ銀行から返ってきた。

 通帳が存在している解約前の口座情報が「存在しない」ということもおかしいし、つい先月に「存在していた」と回答していた口座まで「存在しない」という回答はありえない。C氏は食い下がったが、窓口では「こちらではわからない」としか答えない。恐ろしいまでにデータ管理がずさんな状況なのである。

 一連の対応のずさんさから、C氏は事実関係の説明や口座残高の支払いなどを求めてゆうちょ銀行を提訴するが、十分な証拠を示すことができないまま、結果的に取り下げている。 

●裁判での立証は困難

 日本の裁判においては原告が自身の受けた被害/損害の事実を立証しなければならないのだが、ゆうちょ銀行の口座を管理しているのはゆうちょ銀行自身だ。同行が「ないといったらない」と通してしまえば追及の方法はなく、立証はできない。立証できなければ裁判には勝てない、という悪循環なのである。

 特にゆうちょ銀行の場合、顧客管理システムが昔の台帳管理からオンラインに移行する際に「名寄せ」が徹底できていなかったことが問題の根源として挙げられる。地方の小さな特定郵便局の場合、オンライン化に際して混乱があったはずであり、緻密にデータ移行できたかどうか疑わしい。ただいずれにせよ、裁判で立証するのは極めて困難であることは確かなのだ。

 同じような問題は、農協や三菱東京UFJ銀行でも報告されている。いずれの事件も、行員が文書を偽造した不正が原因で、被害者個人が身に覚えのない借金を背負わされ、取り立てられているのだ。当の銀行は、取り立ての際にサービサー(債権回収会社)に債権譲渡を繰り返すので詳細を把握できていない。一方で取り立てに伴う民事訴訟には被害者も対応せざるを得ず、時効も3年と短いために被害者は対抗策を法的に打てない。

 こんな事態が許されてよいはずがない。全国で同様の事件は多いのだが、大手メディアではなかなか報道される機会もなく、また制度的な問題で皆「立証」ができずに泣き寝入りを強いられている。そして過去の経緯の通り、自浄作用は期待できない。

 結局、民営化やトップの入れ替えを経ても、ゆうちょ銀行は依然としてお役所意識をぬぐい切れていない。そもそも、「民間企業の社風を避けて、あえて郵便局に入った人たち」が経営する会社だ。意識はそう簡単には変えられないことだろう。民間企業で発生したら、連日メディアで大バッシングになるレベルのことが起きているのだが……。

 200兆円の国富をムダにするわけにはいかない。やる気のない行員は厳しく処罰し、民間から優秀なマネジャーをどんどん登用し、価値を創り出せる組織となることを期待したい。

 話は最初に戻るが、少なくとも就職先選びにおいては、このような内情とメンタリティを持つ組織であることは知ってから受けられたほうがよいと思う。
(文=新田 龍/株式会社ヴィベアータ代表取締役、ブラック企業アナリスト)

新田 龍(にった・りょう):株式会社ヴィベアータ代表取締役、ブラック企業アナリスト。
早稲田大学卒業後、「ブラック企業ランキング」ワースト企業2社で事業企画、人事戦略、採用コンサルティング、キャリア支援に従事。現在はブラック企業や労働問題に関するコメンテーター、講演、執筆を展開。首都圏各大学でもキャリア正課講座を担当。

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