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「ダイヤモンド」vs.「東洋経済」! 経済誌双璧比べ読み(11月第2週)

事業承継、なぜ難しい?お家騒動の円谷プロ、失敗した社長公募、後継者不在のスズキ…

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円谷プロ公式サイト より

「週刊ダイヤモンド」(ダイヤモンド社/11月9日号)は「完全対策 事業承継」という特集を組んでいる。「企業経営者にとって後継者にバトンを渡す『事業承継』は重要課題の一つだ。高度成長期に創業した会社が、続々とトップ交代の時期を迎えている一方で、準備が進んでいない企業は6割にも達している。後継者へのバトンタッチがうまくいかなければ、会社の成長が止まり、業績の停滞を招く。最悪の場合、倒産に至るケースもある。手塩にかけた会社を“永続企業”としていくための、事業承継の極意を紹介する」という内容だ。

●後継者選びの難しさ

 ユーシンという自動車部品製造のメーカーをご存じだろうか。売り上げを50倍に伸ばした名物社長が2010年、上場企業では異例の新聞広告で次期社長を公募したことで、一躍、ニュースになった会社だ。公募には2週間で1722人の応募者が殺到し、社長候補として、東京大学を卒業した外務省官僚と副社長候補としてソニーの関連会社出身者が選ばれた。企業のグローバル化を目指す名物社長にとっては理想的な人選に思えた。

しかし、あれから3年。

「(外務官僚は)根本的な発想が公務員で、金儲けに徹し切れず、商売人に不向きだった」「(ソニーの関連会社出身者も)働き方が期待外れだった」と後継者選びに失敗した。「結局集まったのは、元の組織で認められていないか、不満を抱えている人物ばかり」と公募による後継者選びの難しさを名物社長は語る。現在は、所属組織の3倍の年収を提示し、外国人にも門戸を開いているが「意中の人はなかなか首を縦に振ってくれない」とこぼしている(特集記事『プロローグ 事業承継が危ない』)。

 残念ながら、この名物社長は、優秀な人間は「カネではなく働きやすさ、満足感を求める傾向にある」ことを知らないようだ。目の上に口うるさい名物社長と株主がいる状況では、社長職を引き受ける人間はよほどの世間知らずに違いない。ファーストリテイリングの柳井正会長兼社長も、そうした呪縛にとらわれている(以前から65歳になる14年2月までに、社長を退き会長に専念すると公言してきたが、後継者育成がうまくいかずこの10月、これを撤回した)。

 現実的に、事業承継における後継者の不在やお家騒動は今後、ますます増えてきそうだ。というのも、一般の会社員なら定年を迎えている65~69歳の経営者では過半数が、80歳以上の経営者でも3分の1以上が後継者不在となっているのだ。

 スムーズに行っていたはずの世代交代がうまくいかなくなった有名な事例もある。自動車メーカー大手のスズキだ。現在の鈴木修会長兼社長は2代目社長の鈴木俊三氏の女婿で、俊三氏もスズキ創業者の鈴木道雄氏の女婿と、優秀な女婿への承継を進めてきた。鈴木会長兼社長も次代のリーダーにと目していた女婿が07年に膵臓がんで急逝。現在、82歳の鈴木会長兼社長は長男の鈴木俊宏氏を副社長に昇格させるなど、事業承継が急務になっている(特集『Part4 大企業・老舗の継がせ方』)。

●円谷プロのお家騒動

 衝撃的なのは、『ウルトラマン』の円谷プロダクションの事業承継の失敗だろう。国民的ヒーロー『ウルトラマン』の生みの親で“特撮の神”と呼ばれた創業者、円谷英二氏。その孫で6代目社長も務めた円谷英明氏は、お家騒動の内幕を暴露している。

 そもそものきっかけは、創業者・英二氏の死からわずか3年後の1973年、41歳の若さで2代目社長円谷一氏が亡くなったことだ。後継者も定めない急逝で、兄弟間でお家騒動が始まったのだ。ウルトラマンという圧倒的なコンテンツのロイヤルティを当てにした放漫経営もあって、銀行にも融資を拒まれるほどになり、2004年、英明氏は6代目社長に就任したが1年で解任された。その後、融資を受けていた広告コンテンツの制作会社に経営権を奪われ、円谷一族は一掃。現在、株主構成はバンダイが49%、51%はパチンコ機器メーカーという状態で、英明氏は派遣会社に紹介された結婚式場で働く日々だという。

 なお、円谷一族では特撮番組『宇宙刑事シャイダー』(テレビ朝日系/1984~85年)で主演した円谷浩氏が30代には知られているかもしれない。浩氏は英明氏の弟で、37歳で肝不全により早逝している(円谷優子というアイドルもいたが、彼女は英明氏のいとこだ)。

 ウルトラ兄弟は結束が固く、協力して敵を倒すが、実際の円谷一族はバラバラでカネに負けてしまったということだろうか(特集記事『ウルトラマンが泣いている!? 円谷プロ“お家騒動”の顛末』)。こうした結末にならないように、経営者一族は読む価値がありだ。
(文=松井克明/CFP)