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吉田潮「だからテレビはやめられない」(11月10日)

スーパー脇役・要潤、ハマり役で新境地切り開く“衝撃作”キノコCMが話題に?

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ホクトのテレビCM『立派なきのこで菌活』(「YouTube」より)
 主要なテレビ番組はほぼすべて視聴し、「週刊新潮」などに連載を持つライター・イラストレーターの吉田潮氏が、忙しいビジネスパーソンのために、観るべきテレビ番組とその“楽しみ方”をお伝えします。


 要潤。毎クール、必ずどこかのテレビ局のドラマに登場する、売れっ子サブキャラ俳優である。二枚目でスタイルもよくてカッコイイんだけど、どこか不穏というか不安な印象がつきまとう。目の奥が笑ってない、深い闇があるというか。だからこそ悪人も善人も三枚目も奇人も演じられる、スーパー「脇」役者でもある。残念ながら、「要潤と言えばこの役柄!」というのが頭に思い浮かばない。と、思っていたら、最近、驚くほど「要潤はコレだ!」と腑に落ちた映像が流れた。

 食用キノコを製造する会社・ホクトのテレビCMである。ここのCMは今までほんわか一辺倒、イラストのゆるキャラが出てきて、お母さんたちが安心して観ていられるものばかりだった。ところが、要潤がエリンギのピアスをして登場したのだ(この時点でざわざわ)。しかも、スーパーで買い物をする鈴木砂羽の背後から近寄り、耳元でささやく。「奥さん、普通のきのこと立派なきのこ、味がいいのはどっち?」。鈴木は指をくわえて戸惑いながらも「……どっちも一緒よ」と答える。すると、要潤はおもむろに鈴木の手を取り、「そっちじゃない、こっちだ!」と自分の股間へと引き寄せる。鈴木の手の先にあるのは、ホクトのしめじ、というオチである。世の中の奥さんたちがざわざわすること間違いナシ、話題のCMである。

 要潤をキャスティングした時点で、このCMは大成功だと思った。ここ数年、要潤の立ち位置をうまく分類できずにいたのだが、まさにコレである。ちょっと暴力的かつ性的なニオイを醸し出しつつ、女性(特に人妻・熟女)を虜にしてしまう。ついでに言えば、なんとなく「手だれで立派なキノコ感」も連想させる。要潤が持っている、分類不能な要素が、この15秒間にぎゅっと凝縮されているのだ。

 昭和の俳優で言えば、緒方拳かな。ただし、要潤の場合はかなりお手軽感があり、コメディ要素が上回る。今回はエリンギピアスが、さらに「笑いの要素」を強めているのだ。

 実際に、テレビのオンエアではまだ1回しか観ていないが、あまりに衝撃的だったので、周囲の人間にも聞いてみた。多くの人が好感を持っていて、しかも脳裏に焼き付いているという。ネットで調べたら、ほかにも数パターンあるようだ。

 この手のCM、日本ではオンエア寿命が短かったりする。頭が固くてユーモアを理解できないクレーマーがイチャモンつけたりするから。でも、私はこういう大人のCMが大好きだ。だって誰も傷つかないし、くすっと笑えて後味爽快だもの。「シモネタじゃん」と毛嫌いする人もいるかもしれない。でもシモネタをフックにしつつ、商品の特性や魅力をしっかりオチに入れ込んでいるのだから、完成度の高いCMであることは確かだ。ワケのわからない内容で、「続きはWebで」なんて逃げるCMよりは、よっぽどすがすがしい。

 ということで、ホクトのおかげで、俄然、要潤が気になり始める。現在、『刑事のまなざし』(TBS系)と『東京トイボックス』(テレビ東京系)の2本のドラマに出演しているのだが(『東京トイボックス』は、なんと主演!)、なんかこうパッとせず印象に残らない。少し前にレギュラー出演していた『タイムスクープハンター』(NHK)の時空ジャーナリスト役も悪くはなかったのだが、番組自体が地味で目立たなかったし。今後のさらなる飛躍を期待したいところだ。

 どうでもいいけど、スーパーでエリンギを見るたびに要潤を思い出すんだろうなぁ。
(文=吉田潮/ライター・イラストレーター)

●吉田潮(よしだ・うしお):
ライター・イラストレーター。法政大学卒業後、編集プロダクション勤務を経て、2001年よりフリーランスに。「週刊新潮」(新潮社)、「ラブピースクラブ」(ラブピースクラブ)などで連載中。主な著書に『2人で愉しむ新・大人の悦楽』(ナガオカ文庫)、『気持ちいいこと。』(宝島社)、『幸せな離婚』(生活文化出版)など。カラオケの十八番は、りりぃの「私は泣いています」、金井克子の「他人の関係」(淫らなフリつき)など。