「私どもスバルを支え、愛していただいているお客様のことを、最大級の敬意をもってスバリストと呼んでいます。その方たちは人生を楽しみ、車の走る楽しさを愛し、趣味に情熱をそそぎ、家族や仲間を大切にする方たちです。このような方々がいらっしゃることと、このような呼び名があることは私たちスバルの誇りです。そうしたすべてのスバリストに最大級の感謝をこめて、(スバリストと)共に走り続けていきます」
富士重工業の好業績が際立っている。10月末、吉永社長は13年4~9月期連結決算発表の会見の席上で、「売上高、各利益のすべての指標で半期として過去最高。世界販売台数、米国販売台数でも過去最高を記録した」と、笑みを浮かべながら語った。
上半期の営業利益は前年同期比で3.5倍の1507億円。日本の大手自動車メーカー8社の中で、富士重工は販売台数ベースでは最下位だが、営業利益の額はトヨタ自動車、本田技研工業(ホンダ)、日産自動車に次いで堂々の4位。売上高営業利益率は13.4%でトヨタ自動車(10.0%)を抜いて首位に躍り出た。ちなみにトヨタは、富士重工の筆頭株主である。
富士重工の業績好調の要因は、世界販売の58%(上半期実績)を占めるドル箱の米国での販売が好調なことと、円安の相乗効果だ。米国では13年の販売が5年連続で過去最高を更新することが確実となるなど、すべてのモデルが売れている。吉永社長は年初に42万台としていた米国販売計画を47万台(前年比21%増)に上方修正した。それでも「現地のディーラーからは、『タマがあればまだまだ売れる。もっと供給を増やしてほしい』とプレッシャーをかけられている」(吉永社長)という状況だ。
米国での販売が絶好調なことを受けて、世界販売台数は80万台、世界生産台数は81万台にそれぞれ引き上げたが、米国市場には47万台を振り向けるのが精一杯だ。販売に生産が追いつかないと嬉しい悲鳴をあげているのは、自動車メーカーの中で富士重工だけである。
また、好業績のもうひとつの要因である円安効果については、前年同期との比較で為替レート差(円安)による増益要因が872億円に上り、営業利益の半分強を占めた。14年3月期の通期予想でも営業利益2780億円のうち、為替分の増益は1334億円と半分を見込んでいる。
●スバリストをターゲットにしたクルマづくり
富士重工は、13年度上半期の販売台数は国内が前年同期比36%増、米国が同26%増と2ケタの伸びを記録。同社の自動車の人気を支えているのは、熱烈なスバルファンだ。熱狂的なファンは国内ではスバリスト、米国では「Subie(スービー)」と呼ばれている。
では、なぜ日米でスバルのファンが急増しているのだろうか。
その理由について「趣味性の高いユーザーを味方につける」(吉永社長)クルマづくりに徹してきたからだ。
吉永社長は自動車業界の異端児社長である。単に台数を競えば価格競争になり、大手の中では最も小さな企業のスバルは他社に太刀打ちできない。上位メーカーと同じ土俵に乗らなず、軽自動車から撤退し、大手とはまったく逆の戦略を展開した。そして、走行性能にうるさいマニアックなスバリストをターゲットにしたクルマづくりに的を絞ったのだ。