「週刊東洋経済」(東洋経済新報社/1月11日号)は『不動産動き出す!』という特集を組んでいる。「アベノミクス効果から不動産市場の回復が一段と鮮明になっている。『割安感』から海外投資マネーが日本の不動産を物色する動きも出てきた」という内容だ。
特集記事Part1『トーキョーを買え!』では、海外投資マネーの動きを追っている。2006~07年の不動産ミニバブル時に一斉に日本買いをした外国人投資家、なかでも外資系ファンドは、リーマンショックで多くが撤退。その後、不動産市場は低迷が続いていたが、主要国の金融緩和で世界の投資マネーは理想的な投資先を探していた。
そこに、アベノミクスへの期待に伴い日本の景気先行きに対するセンチメントが改善し、低金利や不動産の割安感もあって、投資マネーが流入し始めた。20年の東京オリンピック開催決定や円安という追い風も吹いている。
ただし、海外投資マネーといっても、その主役は変わった。
かつての売却益狙いのヘッジファンドに代わって日本への投資を拡大させているのは、政府系投資ファンドや年金基金など、長期投資を志向する投資家だ。さらに、ここへきて存在感を強めているのがアジアの投資家だ。「台湾や香港、韓国、シンガポールでは自国の不動産が高騰していることもあって、割安な日本の不動産投資が人気になっている。『同等規模の物件を比べた場合、東京が1500万円とすると香港では4000~5000万円する。3分の1の投資で同じ賃料がとれる』」と不動産コンサルタントは話す。
●活況のマンション市場
特集記事Part2『どうなるマンション市場』では、08年のリーマンショック前の水準に回復した首都圏の新築マンション市場に迫っている。
13年に首都圏のマンション供給戸数が5万6000戸と、6年ぶりの水準に達したが、その背景には、低金利や消費増税前の駆け込み需要、株高による含み資産が増加した富裕層の購入余力が向上したこと、また相続対策が活発化していることもある。特に都心の高額物件「億ション」の動きが活発だ。
今後さらに人気が高まりそうなのは、東京オリンピック開催地として注目が高まり、供給量の多い湾岸エリアだ。
また、新築との価格差が縮小し始めた中古マンションも活況を呈している。新築と異なり個人間の売買であれば建物自体に消費税がかからないため、駆け込み需要ではないだろうが、比較的若い世代を中心にニーズが高まっているという。
特集で懸念材料としているのは、1つ目に「センチメントは改善しているが、賃料など実体経済が本当に改善するかどうか」。2つ目は金利動向。「今後、金利が上昇する一方、賃料が上がらない場合、海外勢が一斉に引き揚げる恐れがある。こうした急落リスクの防波堤となるのが、目下政府が取り組んでいる外国人観光客や企業の誘致などを含む一連の成長戦略だ」として、魅力ある都市をつくるための成長戦略が必要だとする。
●1月最初の3連休が今年を占う
特集の懸念はわかるのだが、この懸念に、世界・日本経済の14年の基礎知識が入っていないために物足りない。
米国の量的金融緩和(QE3)の縮小で、投資マネーは逆回転を始める。その影響はアジアの不動産バブルにどこまで影響を与え、どの程度日本市場にも及ぶのか。また、特集記事では日本の国内金利の上昇を懸念しているが、しかし、日本銀行はさらなる金融緩和を目指しているのではないか(それがアベノミクスの第一の矢であるはず)。