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吉田潮「だからテレビはやめられない」(2月9日)

『あまちゃん』がテレビ界に残した悪影響とは?うかつに真似した失敗作から目が離せない?

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『夜のせんせい』公式サイト(「TBS HP」より)
 主要なテレビ番組はほぼすべて視聴し、「週刊新潮」などに連載を持つライター・イラストレーターの吉田潮氏が、忙しいビジネスパーソンのために、観るべきテレビ番組とその“楽しみ方”をお伝えします。


「よッ! 役者殺し!」と声をかけたくなる連続テレビドラマがあった。主役級ではないけれど脇でぴりりと風味を効かせる名脇役俳優たちを無駄に大勢集めちゃって、どうにもこうにもとっちらかってる印象。もったいないというか、無駄遣いしやがってというか。普段はこの人たちがいれば劇中は安泰なのだが、あまりに登場人物が多すぎる。彼らの魅力を堪能する前に、このドラマは終わってしまうだろう。それが『夜のせんせい』(TBS系/毎週金曜夜10時放送)である。

 昨年放送されたドラマ『あまちゃん』(NHK)は名作だったが、ドラマ界に残した悪い影響としては「キャラクターの氾濫」である。『あまちゃん』のように、その世界観がきちんとまとまっていて、役割分担とキャラ設定ががっつり固められていれば、問題はない。が、これをうかつに真似して大失敗、というのも最近増えている気がする。『夜のせんせい』はまさしく、これ系。

 観月ありさが場末のスナックのママでありながら、定時制高校の先生を演じる。ファッションはとにかくアニマル系。非常識レベルの豹柄や虎顔プリント。楽観主義の熱血派で、今の時代もっとも敬遠されるタイプの女を演じている。観月はここ数年、この手の役が多い。視聴者は食傷気味だし、米倉涼子とかぶるよね、キャラが。劇中のセリフにもあった「老けたバービー人形」というのは言い得て妙だが、今回は観月にとってもかなり損じゃないかと思われる。なぜなら主役に期待するものが何もないから。暑苦しく「絆」を求めて、騒動を余計に大きくしていく姿は、学園モノによくある話だし、視聴前からみんなうっすら気づいている。このキャラに新奇性は何ひとつないだろうということに。

 それでも私は観続ける。珠玉の名脇役俳優たちがこの駄作の中で、どれだけ実力を発揮できるか。年齢も背景もそれぞれ、人生で辛酸を舐めたフシもある定時制高校生の役だ。彼らは彼らで「やっつけ仕事」としてサラッと流すのかもしれないけれど。

●詰め込まれた実力派俳優たち

 まず、なんといっても高橋一生。役者を目指すも芽が出ず、歌舞伎町のホストに身をやつしている。理知的な顔立ちはエリート役(DV夫とか医者とか)が多いけれど、今回はやさぐれた底辺ホスト。芝居がうまいだけに、安易な設定でホスト役というのが惜しい。

 ハンサムバカでお馴染みの田中圭は、薄くて軽いノリで騒動の火に油を注ぐ役柄だ。今後の展開次第だが、たぶん重苦しい背景とか不幸な生い立ちとかナニカを背負わされるんだろうなぁ。軽いままならいいけれど。

 無口で冷静、職業不明だが、漢字が読めないという役どころの山本耕史。たぶん裏稼業。ベビーフェイスの反社会勢力。元ひきこもりで対人恐怖症の蓮佛美沙子に、漫画家アシスタントでオタク道まっしぐらの大倉孝二、喧嘩っぱやい鳶職男子に太賀、お気楽な主婦ブロガーの堀内敬子、最高齢の独居老人に織本順吉、コネと人脈で観月を救う笹野高史。

 一方、観月の非常識な教師っぷりを問題視する学校側にも濃い面々が。イヤミな校長には最近悪役が板についてきた中原丈雄、中原にこびへつらう卑屈な教員に矢柴俊博、そもそも観月を教員にスカウトしたのが光石研……あ、忘れちゃいけない、観月のスナックに勤める謎の中国人風ホステスには池谷のぶえもいるんだった。とにかく多すぎ、大杉漣。ダジャレも書きたくなるほど、実力派の俳優がぎゅうぎゅうに詰め込まれているもんだから、個人的には目が離せなくなっている。

 困った。物語はちっとも面白くないのに。矛盾。
(文=吉田潮/ライター・イラストレーター)

●吉田潮(よしだ・うしお):
ライター・イラストレーター。法政大学卒業後、編集プロダクション勤務を経て、2001年よりフリーランスに。「週刊新潮」(新潮社)、「ラブピースクラブ」(ラブピースクラブ)などで連載中。主な著書に『2人で愉しむ新・大人の悦楽』(ナガオカ文庫)、『気持ちいいこと。』(宝島社)、『幸せな離婚』(生活文化出版)など。カラオケの十八番は、りりぃの「私は泣いています」、金井克子の「他人の関係」(淫らなフリつき)など。