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安価な中国スマホ、なぜ世界市場で急伸?日本浸透のカギはキャッシュバックの終焉?

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ノキアの新興国向けモデル「Nokia X」

 毎年スペインで催される世界的な移動体通信関連の総合イベント「Mobile World Congress」(以下、MWC)が、今年も2月24日から27日にわたりバルセロナにて開催された。MWCは、携帯電話モバイル関連事業に関連する事業者が集まる世界最大の見本市であり、その年の携帯電話業界の動向を占うイベントとしても注目されている。

 そんなMWCで今年、最も勢いを感じさせたのはソニーやサムスン電子などではなく、中国のスマートフォン(スマホ)メーカーであった。なぜ今、中国メーカーが勢いを伸ばしているのだろうか。また、中国メーカーが日本で勢力を高める可能性はあるだろうか。

●存在感高まる中国メーカー

 日本の携帯電話市場で中国メーカーといえば、モバイルWi-Fiルーターや通信機能付きフォトフレームなど、ニッチなモデルを提供しているイメージが強い。だが近頃、こうした中国の通信機器メーカーが、スマホ市場で大幅な伸びを示し、存在感を高めているのだ。

 主な中国メーカーとしては、ファーウェイやZTE、そしてパソコンメーカーとして知られるレノボなどだろう。これらのメーカーはいずれもMWC会場で大きなブースを構え、最新のスマホやタブレット、さらにはウェアラブルデバイスまで、幅広いハードを展示して積極的にアピールしていた。

 だが、こうした大手企業に限らず、中国には大小合わせると非常に多く存在している。それゆえMWCでも、欧州や南米などで知名度のあるTCL(仏企業のブランドを使用し「ALCATEL ONETOUCH」として事業展開している)のほか、HisenseやKONKAなどがスマホを展示していた。

 中国メーカーの影響が大きくなっていることは、OSに関する動向からも確認できる。スマホの“第3のOS”として注目を集めるMozillaの「Firefox OS」は、中国企業が製作したSoC(System on a Chip/システムに必要な機能を集約した半導体チップ)を使用し、“25ドルスマホ”を実現すると公表して大きな注目を集めた。またマイクロソフトも、ZTEやレノボ、そしてLongcheerやGiONEEといった中国メーカーが、同社製品Windows Phoneの製作パートナーとなったことを発表している。

ファーウェイやZTEのほか、ALCATEL ONETOUCHなど日本では馴染みのない中国メーカーもMWCには出展していた

●新興国市場へのシフトが中国メーカーの伸びを支える

 ではなぜ、これほどまでにスマホ市場で中国メーカーの存在感が高まっているのだろうか? その大きな要因となっているのが、スマホの市場変化だ。

 ここ数年、スマホの普及は日本をはじめ、先進国で急速な伸びを示していた。先進国における売れ筋のスマホは、アップルのiPhoneシリーズや、サムスンのGALAXYシリーズなどのように、非常に高い性能を備えたフラッグシップモデルが中心であった。こうしたモデルは高性能・高機能である半面、販売奨励金がなければ10万円近い価格を示すなど高額な商品でもあり、一定の所得水準を持つ先進国のユーザーでなければ購入できなかった。

 しかし現在、先進国ではある程度スマホの普及が進んでしまっており、市場の伸びは鈍化傾向にある。日本でも、昨年から普及率の伸びが停滞し始めたといわれるようになったが、そうした状況が多くの国で起こりつつある。

 代わりってスマホ需要が急速に伸びているのは、中国などの新興国だ。こうした国々でフィーチャーフォンからスマホへの乗り換えが起きていることから、スマホの主戦場は急速に新興国へと移りつつある訳だ。

 だが所得水準が先進国より低い新興国では、フラッグシップモデルは一部の富裕層でなければ購入できないため、より安価なミドル/ローエンドのモデルに人気が集まる傾向が強い。そうしたことから、生産コスト面で大きな強みを持ち、多くの国のニーズに合った多様な商品を提供できる中国メーカーが、急速に台頭してきたのである。

新興国向けに注力するFirefox OS搭載スマートフォンを提供するのも、その多くが中国企業だ

●日本では“キャッシュバックの終焉”が大きな転機に?

 ところが、中国メーカーはコスト面で強みがある一方、ハイエンドモデルを見るとアップルやサムスンの製品に似たものが多いなど、独自性のあるフラッグシップモデルの開発にはまだ課題があるように感じる。加えて多くの中国メーカーは、先進国より新興国を重視した戦略を取っていることから、少なくとも今のところ、海外での盛り上がりとは裏腹に、日本に与える影響は限定的といえるだろう。

 では中国メーカーが、スマホで日本市場を攻略し、大きな影響を与える存在になる可能性はあるだろうか? もし大きな転機が訪れるとすれば、それは“キャッシュバックの終焉”にあるのではないかと、筆者は考えている。

 現在日本では、主に番号ポータビリティ(MNP/電話番号はそのままで、キャリアを変更できる制度)によって他キャリアから乗り換えるユーザーに対し、数万円ものキャッシュバックが提供されるケースが増えている。特に2~3月の春商戦シーズンにはキャッシュバックの額が大幅に上昇しており、MNPでの乗り換えを同時に多人数で行うと40~100万円ものキャッシュバックをする店舗が現れるなど、やや異常な事態にもなっている。

 競争が過熱し、行き過ぎたキャッシュバック合戦が相次いでいることから、今後総務省や消費者庁などが動いてキャッシュバックに規制をかける可能性もないとは言い切れない。もし、キャリアがキャッシュバックを提供できなくなった場合、従来、実質的にタダ同然で購入できていたiPhoneなどの高額端末が、定価に近い額で購入せざるを得なくなるなど、端末代が大幅に上昇してユーザーの消費心理を急速に冷やす可能性も高い。

 消費心理が冷え込めば、携帯電話の出荷台数が激減するため、キャリア各社はスマホの調達価格を抑える方向に動き出すと考えられる。そうした状況になれば、安価に幅広いモデルのスマホを提供できる中国メーカーにとって、日本で勢力を拡大できる大きなチャンスとなることは間違いない。

 すでにファーウェイやZTEなどは日本で端末を提供しており、キャリアとのコネクションも持っている。それだけに、高額キャッシュバックの終焉による市場の冷え込みによって、中国メーカーが急伸する大きな契機となる可能性は決して低くないといえよう。
(文=佐野正弘/ITライター)

「Xperia Z2」や「GALAXY S5」など大手メーカーのフラッグシップモデルは、高性能な分値段も高く、定価で販売されると購入できる人は限られてしまう