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広木隆「僕にも言わせろ~真説 経済のミカタ」(5月23日)

経済統計に異変?市場で高まる「人間の判断」の重要性と、「スピード重視」からの転換

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「Thinkstock」より
 国内系、外資系運用会社を渡り歩き、株式投資の最前線に20年以上携わった後、現在はマネックス証券チーフ・ストラテジストを務める広木隆氏が、「経済のミカタとカラクリ」をわかりやすく解説します。

 毎月第一金曜日の夜は、トレーダーにとっての一大イベントがやってくる。米国の雇用統計が発表されるのだ。雇用統計が発表される金曜の夜は、ネット証券各社によるオンライン・セミナーが花盛り。僕の在籍するマネックス証券の「雇用統計・実況中継!」をはじめ、「ライブ!雇用統計ナイト」「雇用統計探検隊!」「雇用統計儲け隊」「雇用統計だよ!全員集合」「雇用統計だよ!おっかさん」等々、(大半が僕の創作だが)ほとんど馬鹿騒ぎしているとしか思えない。

 以前、「雇用統計のお祭り騒ぎには辟易としている」とレポートで書いたら、読者からお叱りを受けた。いわく、「『辟易』は閉口すること、うんざりすることの意で、『辟易する』と使う。つまり、『検討する』『推敲する』と同じく、<漢語+する>というサ行変格活用の動詞である。『推敲とする』とは言わないように『辟易とする』は明らかな文法上の間違いである」とのこと。誠に読者は恐ろしい、もとい、ありがたい。勉強になります。

 いきなり最初から話がそれてしまったが、雇用統計はブレやすいにもかかわらず、それにマーケットは過剰反応する。予想を上回ったか下回ったかで市場が動く。ほとんど反射神経の勝負だ。実際のところ、ニュースのヘッドラインに反応して売買注文を出すようにプログラムを組んでいる高速取引のヘッジファンドも存在する。人間の判断を挟まないで、文字通り機械的に売買するのだ。そこに、おかしな言葉だが「人間の判断」 で取引するトレーダーたちが参戦する。もう、こうなってくると丁半ばくちを開帳している賭場さながらである。サイコロの目が出るのと同じように、発表された数値が予想より上か下か、判明した瞬間におカネが動く。ドル/円レートなら 1円くらい簡単に動く。それによる市場参加者のプロフィット(利益)とロス(損失)の絶対値の合計は、いったいどれほどになるのだろう。

 先般発表された米国の4月雇用統計で、非農業部門の雇用者数(NFP:ノンファーム・ペイロール)は前月から28万8000人増加した。20万人程度を見込んだ市場予想を大幅に上回ったうえ、2月と3月分も上方修正された。失業率は前月から0.4%低下し6.3%となり、6.6%の市場予想を大きく下回った。ヘッドラインは申し分のない、手放しで喜べる良好な結果だった。

 事実、この雇用統計を受けてニューヨーク外国為替市場で円はドルに対して急落。一時は1ドル103円02銭近辺と、4月8日以来約3週ぶりの円安・ドル高水準を付けた。米国債も売られ、利回りは跳ね上がった。株も買われた。

●なぜ市場は弱い反応?

 しかし、終わってみれば米国金利は低下、為替は円高、そして米国株も利益確定売りで下落した。ウクライナ情勢の緊迫化という要因もあったにせよ、これだけ強い雇用統計が出たわりには、なんとも弱い市場の反応となった。