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好調・楽天の死角、本当の脅威とは? セブンとアマゾンの挟撃、新複合小売の時代突入

文=松田久一/JMR生活総合研究所代表
好調・楽天の死角、本当の脅威とは? セブンとアマゾンの挟撃、新複合小売の時代突入の画像1通販サイト「楽天市場」より

●好業績の楽天

 電子商取引(EC)大手・楽天の業績が好調である。楽天のECの2013年度の流通総額は約1.7兆円、対前年でおよそ20%の成長である。昨年に発表された「Yahoo!ショッピング」(ヤフー)の衝撃的な出店無料化の影響はまったくみられない。これはEC市場が限られたパイの争奪競争ではなく、共存できる拡大余地があるということだ。EC比率は3%台とアメリカの半分程度の水準であり、まだまだ成長段階にある。さらに増税前の駆け込み需要、そしてアベノミクスによる消費回復の追い風がある。また、スマートフォン(スマホ)普及の波に乗る「DeNAショッピング」(ディー・エヌ・エー)、「LINEモール」(LINE)などの追撃も及ばない勢いである。

 しかし、思わぬところに楽天の死角はある。業績好調の半面で楽天は、前門の虎、後門の狼に挟撃されているのだ。

●前門に立ちはだかるセブン&アイ・ホールディングス

 前門に立ちはだかる虎は、大手コンビニチェーンのセブン-イレブンなどを展開する日本最大の小売企業、セブン&アイ・ホールディングス(以下、セブン&アイ)である。日本の年間小売販売総額は約134兆円であり、約114万の事業者によって担われている。この頂点に立つセブン&アイの売上高は約4.9兆円であり、楽天の流通総額の約2.9倍に上る。しかし、楽天が年率20%の成長率を維持できれば、最短で6年後には追いつける。

好調・楽天の死角、本当の脅威とは? セブンとアマゾンの挟撃、新複合小売の時代突入の画像2「JMR生活総合研究所 HP」

 この業界トップのセブン&アイが、ネット販売とリアル店舗での販売の融合、いわゆるオムニチャネル化を宣言した。セブン-イレブン、スーパーのイトーヨーカ堂、百貨店のそごう・西武などの約20社で扱う約300万品目の商品を、どの個店でもネットでも購入できる仕組みをつくり始め、5年で約1000億円の投資を行うとみられている。

 これは一見すると、リアル小売業によるEC市場への後発参入・追撃のようにみえる。しかし、ネットとリアルの融合時代の到来にこそできる相乗効果を利用した、新しい複合小売業への転換を目指すものである。楽天の1日の訪問者数は、およそ243万人と推定されるが、全国1万6000店を擁すセブン-イレブンの1日の来店客数は、約1600万人である。クリックでの訪問と出向を伴う来店を比較すれば、消費者負担も数段に異なり、楽天の約6.6倍の集客力を持つセブン-イレブンの吸引力がいかに大きいかがわかる。

好調・楽天の死角、本当の脅威とは? セブンとアマゾンの挟撃、新複合小売の時代突入の画像3『ジェネレーショノミクス:経済は世代交代で動く』( 東洋経済新報社/松田久一)

 ネットの便利さとコンビニの最寄り性を生かしたサービスが展開できれば、楽天が模倣できない仕組みが構築できる。近所のコンビニを宅配ボックス代わりに、全国から常温、チルドやコールドなどどんな温度帯のものでも、どの業態からも利用できる。ネットとリアル、さまざまな業態をあらゆる組み合せで使うことができるようになり、楽天の脅威になることはいうまでもない。楽天も、今秋から大丸やミスタードーナツなどとの共通のポイント化を進めて、リアル小売への本格的な足がかりをつくろうとしている。一方的に、ネット通販がリアル小売の市場を侵食する段階は終わった。

松田久一

松田久一

JMR生活総合研究所代表

JMR生活総合研究所

 生活者の総合研究に基づいて、新しい事実を発見し、その事実から戦略を組み立て、経験を生かしたコンサルティングを通じて、クライアントの問題解決を行う。1991年に設立してから今日までの約20年の間に、年間平均250、延べ5000のテーマに取り組んできた実績を持つ。主たる領域は、食品、飲料・酒、化粧品・日用雑貨、輸送機器、家電・情報通信、流通など生活者と接点を持つ業界。日本を代表する企業のマーケティング課題のソリューション(解決)に取り組んでいる。

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