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社外取締役、なぜ“ちゃんとした人”は選ばれない?“お飾り”人気、日本企業の悲しき実情

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「Thinkstock」より
 筆者は企業再生の仕事を通じて、数多くの経営者やビジネスパーソンとの協働を続けてきました。企業再生というのは、会社にとっては別として、個人のレベルでは否応がなく取り組むという状況が多いです。そうした局面になると、社員個々人の隠していた本音が露呈していきます。そうした合理と非情理が入り混じるのが企業変革の現場です。

 最近、ビジネス系出版社の人に聞いたところ、同じ週刊誌でも景気動向や人口減少などマクロ経済系の特集号はあまり売れずに、スキル系だけでなく相続税対策やお受験系など個人に関する特集を組むとよく売れるそうです。「アベノミクスで好景気」という新聞報道が真実かどうかより、自分と家族を守る、幸せにすることに集中したいということなのでしょうか。
 
 一方でネットメディアの人によると、マクロ系の時流モノがよくクリックされるそうです。なかなか興味深い現象ですね。そこで今回は、マクロ系の経済関連テーマとして最近話題に上ることも多い社外取締役について考えていきたいと思います。

●人選に手間がかかる理由

 ご存知のように、海外投資家への対応、政策としての成長戦略の推進、企業の経営力そのものの向上などを目的として、上場企業の社外取締役採用が政府等によりあの手この手で促されています。実際に東京証券取引所が今年6月に発表した社外取締役の選任状況によると、社外取締役がいる東証1部上場企業は1345社、全体に占める割合は74%でした。昨年8月時点から253社増え、導入企業の比率も約12%上昇して過去最高に達したようです。

 この動きを先読みして人材紹介・仲介各社は、通常の経営幹部や社員の紹介に加えて、社外取締役の紹介にも乗り出していました。

 数カ月前にたまたま、そうした企業の担当者に話を聞く機会がありました。まず、クライアント企業から社外取締役候補者を紹介するよう依頼を受けます。そこで要請内容に加えて相性などを推測しつつ、ニーズに応じて立派な候補者を順次紹介していきます。ところが紹介すれどもすれども、なかなか決定しないそうです。紹介企業としても採用が決まらないと報酬がもらえませんので、粘り強く紹介し続けても、まだ決まらない。業を煮やし「私たちのネットワークでは、もうほかにいません」という状況になってようやく、本当のオーダーが出てくるそうです。

「親和性を」「歩調を合わせていける」など聞こえの良い言葉を使うものの、要するに「“ちゃんとした人”だと困る」ということが大半だそうです。歴史の長い上場企業ともなると、取締役会の椅子に座るまでには数々の難しい局面を30-40年と乗り越えてこなければなりません。ただしその“難しい”局面というのはカッコいいビジネスジャッジだけではなく、内向き論理の最たるもの、市場原理や世間から見れば間違った判断であったりくだらない内輪もめのようなものでも、当事者にとっては会社員人生がかかった重要な問題であるケースも多い。要するに、お互いにスネに傷を持っていることは認めつつ、それぞれの専門領域については尊重し合うようなメンバーで構成されています。それが正しい流れなのかどうかは、日本経済の流れが物語ってきたでしょう。