日本人の心を表現する言葉として挙がるのが「おもてなし」だ。
「おもてなし」はサービスとは違い、担当する現場の人の温かい心と強い意志が必要になる。個人の心と意思に依存するので、マニュアルがなく、会社で規定をつくることができない。すべて現場で考え、現場で対応することが重要となる。
『「おもてなし力」の磨き方』(蓬台浩明/著、日本実業出版社/刊)は、2012年度経産省「日本が誇る『おもてなし経営企業』」に選ばれた都田建設のリーダーのための心がまえ、行動の仕方を代表取締役社長である蓬台浩明氏の経験と多くの気づきをもとに紹介する一冊だ。
会社が伸びていくと、少しずつ人が増え、環境が整い、働きやすくなる。しかし、そうなれば必ずと言っていいほど、大切なことを忘れてしまったり、お客様と心を込めて会話や対応ができなかったり、ひとつひとつの仕事を当たり前に思うような慢心した態度が生まれてしまう。
そうした社員をなくすために蓬台氏は、社員との「面談」の時間を大切にしているという。
生きがい、やりがい、問題意識や会社を想う気持ちなど、会社の未来は社員ひとりひとりと共につくることに意味があるので、じっくりと対話する。人を本当の意味で活かすことができる組織をつくるために社員と話す時間を、大切に情熱を込めて向き合う。ひとりひとりの才能を最大限生かすことは、こういう時間があってこそはじめてできること。とくに、おもてなし力を持った組織、チームをつくるためには最も大事なことだと蓬台氏は言う。
ホテルや飲食店などを選ぶとき、部屋や料理だけでなく、そこで働く従業員の人たちの「おもてなし」によって、リピーターになるかどうかが決まることは多い。接客業だけでなく、企業同士の取引や話し合い、社内でのコミュニケーションなど、「おもてなし」の心を持った対応はいい結果に結びつくはずだ。
自然と「おもてなし」ができる従業員をどう育てるか。そういったことが企業や人を成長させる大きな要因のひとつとなるのだろう。
(新刊JP編集部)
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※本記事は、「新刊JP」より提供されたものです。