サムスンの課題は、スマートフォンに代わる新たな成長分野を見いだせないことにある。スマートフォン市場は低価格をてこにシェアを伸ばしている中国シャオミ、iPhoneとApp Storeの好調な販売動向に支えられた米アップル、OSへの注力を進める米グーグルなど各企業独自の戦略を展開している。その中で、サムスンはOSも端末も供給していく戦略を進めているが、果たしてうまくいくだろうか。
●市場創造を目指すサムスン
サムスンの現状を端的に表現すると、アップルを追い越すべく、新しい市場創造に取り組んでいるといえる。この戦略の根幹は、IoT(Internet of Things)の推進にある。サムスンは、インターネットを通してすべてがつながる生活スタイルを創造し、さらなる成長を遂げようとしている。そのため、独自OSであるタイゼン(Tizen)を開発し、アンドロイドOSからの脱却を図ろうとしている。
業界レベルで考えると、各社がIoTの発想を共有してビジネスモデルの具体化と構築が進む可能性はある。しかし、新しいOSが既存のiOSやアンドロイドの牙城に食い込むことは容易ではないだろう。知名度、実績のあるシステムを活用したほうがコスト、リスクを低減させることもできるはずだ。
ハードとソフトを両立させることは容易ではない。それを示す良い例が、携帯電話ブランドとしての名を失ったフィンランドのノキアだ。かつてノキアはスマートフォン事業の遅れを打開すべく、独自のOSを搭載した機種を市場に投入した。しかし、iOSやアンドロイドに対抗することはできなかった。すでに消費者の支持を得ているOSが存在する中で、市場に新規参入するリスクは高いと考えられる。
●見いだせない強みを生かす戦略
今のサムスンに必要なものは「選択と集中」だ。自社の強みを認識し直す必要がある。
アップルは低価格版のiPhone 5cを投入し、新興国開拓に乗り出した。だが、その販売実績は満足できるものではなく、生産終了の可能性も出ている。アップルの製品で支持を受けているのは高機能機種であり、現在アップルもその分野に注力している。