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有馬賢治「日本を読み解くマーケティング・パースペクティブ」

なぜテレビドラマは没落したのか?「嘘」に気が萎える視聴者たち

解説=有馬賢治/立教大学経営学部教授、構成=A4studio

スポンサーの問題

 そのような視聴者のドラマ離れには、現代ならではの要因もあるという。

ネットによって情報過多になっている今の時代、中途半端な嘘は通用しなくなっています。大河ドラマや時代劇などでリサーチが不足している設定を採用してしまうと、一人の視聴者がその粗をみつけ、簡単に不特定多数の人間に発信でき、それを受け取った視聴者はその作品に対する気持ちが萎えてしまう、というケースが多く見受けられるような気がします。マーケティングでの顧客満足の考え方では、期待通りでは積極的な評価まではされないとされています。企業が、お客さんの期待以上のものを提供できてやっとファンがつくんですね。ですからドラマで考えた場合には、バランスのいい丁寧なつくり込みをし、時代考証や小道具などの細かな設定にまでお金や人員を費やす必要があるのではないでしょうか」

 制作サイドが視聴者ではなく、スポンサーを向いて作品をつくってしまっているという点も、視聴者が満足できない作品が乱立されている現状の一因ともいえよう。最近のドラマにオリジナル作品が少なく、すでに原作で確固たる人気が築かれた作品を映像化するのが当たり前。スポンサーに数字的根拠を示すには手っ取り早いかもしれないが、結果的に雑な出来となってしまい、原作ファンを失望させるのも、もはやお決まりのパターンだ。

「昔は一つのドラマに対して一つの企業がメインスポンサーとなって、放送しているケースが多かったです。企業も、世の中に娯楽を提供することは立派なCSR(=社会貢献)であるという認識があって、そこにあまりお金を惜しまない時代だったのでしょう。しかし、現在は一社でゴールデンタイムの番組スポンサーとなるには経営面などいろいろな要因から難しくなっています。複数社がスポンサーになれば、制作側もいろいろな方向に気を使いながら作品をつくっていかなくてはいけない。それもまたいい作品を生み出す障害となっているのかもしれませんね」

 「ドラマ作品=サービス財」と考えるのであれば、視聴者にこそ「観ててよかった」と思わせるのが第一目標のはず。しかし、経済状況や社会背景から単純にそれを目指せないのが難しいところ。ドラマ制作者のジレンマはまだまだ解消されそうにない。

(解説=有馬賢治/立教大学経営学部教授、構成=A4studio)

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