「東京海上ホールディングス(HD)、三井住友海上火災保険が相次いで大型買収に動いたこともあり、次は損保ジャパンだろうと新聞各紙はスクープを取るため血眼になっている」(経済担当記者)
もちろん、競合他社が大型買収に動いたところで損保ジャパンが足並みをそろえる必要はないが、「損保ジャパンにはお金が余った事情がある」(同)という。
実は損保ジャパンが狙っていたのは英アムリン。三井住友が9月に買収を発表した損害保険大手だ。三井住友と買収レースで最後まで競り合っていたのが、損保ジャパンだった。最終的には、約34億6,800万ポンド(約6,350億円)を投じた三井住友に軍配が上がったが、損保ジャパンにも同規模の資金を投じる覚悟があったわけだ。
獲物を逃した損保ジャパンは次の出物があるまで気長に待つのも一手だが、横並びが強い損保業界では安穏としていられない事情がある。損保ジャパンは損保事業単体でこそ業界最大手だが、損保系グループとしては「3メガ損保の4番手」と称されるほど。東京海上HD、三井住友海上などを傘下に置くMS&ADインシュアランスグループHDには売上高も利益も後塵を拝す。
積極的な海外展開進める東京海上HD
そうした中、15年度に入り東京海上HDが米国保険会社HCCインシュアランス・ホールディングスを約75億ドル(約9,413億円)で買収すると発表。東京海上HDは直近だけでも08年に英大手保険グループのキルンを約1,000億円、米損保フィラデルフィアを約5,000億円で買収、12年には米生損保のデルファイを約2,050億円で買収した。
「こうした投資の累積に加え、1ドル=120円を突破する為替状況を踏まえれば、さすがにしばらく静観するだろうと思われていた直後の巨額買収だけに、当社幹部の衝撃は計り知れなかった」(損保ジャパン関係者)
損保業界が過去最高水準の利益をたたき出す中、資本の有効活用を求める声は市場関係者の中でも多く、損保各社の相次ぐM&A(合併・買収)は財務戦略上でも有効な一手である。東京海上HDや三井住友の買収先は再保険やスペシャリティ保険で利益貢献も大きい。