ソフトバンクが先週(7日)、大手携帯電話会社3社のトップを切ってスマートフォン(スマホ)の新料金プランを公表した。安倍首相の昨年9月の是正指示を受けた措置で、月額は4900円(通信と通話を合わせた総額、税別)。従来の最安プランに比べて1600円下がる。これをポジティブに評価するかどうかは、ユーザー次第だ。素直に値下げを喜べる人もいれば、依然として不満な人もいるだろう。
残念なのは、今回の是正論議が一度限りの試みに終わる気配が濃厚なことである。というのは、今回、政府には継続的な通信料金の是正指導を行うツール(規制権限)を獲得するチャンスがあったにもかかわらず、総務省の通信官僚たちがその千載一遇の好機をみすみす逃したからである。
規制権限の拡大は、予算や天下りポストの獲得と並んで、官僚が本能的に目指すもののはず。いったい、総務官僚は何を考えているのだろうか。
「自主的に」政府の要求に応じる携帯各社
安倍首相の指示を受けて、高市早苗総務大臣は昨年12月半ば、携帯3社に対し「月額5000円以下」をめどに新プランを導入するよう要請した。ソフトバンクは、今回公表した新プランを4月から導入するとしており、自主的に政府の要求に応じたことになる。
新プランの内訳は、データ通信料金が月額2900円(上限1ギガバイト)と、従来(2ギガバイトまでで3500円が最安)より600円の値下げになった。あわせて、データ通信のヘビーユーザーにしか認めていなかった「通話し放題ライトプラン」(月額1700円で、5分までの通話がかけ放題)の組み合わせを認めた。従来、組み合わせができた「通話し放題プラン」の月額2700円(時間、回数の制限なし)。これと比べて、この部分でも1000円安くなる。
一方、従来と同じ300円のネット接続料(「S!ベーシックパック」)の支払いを義務付け、総額(月額)を4900円としたのである。
当初から予想されていたことだが、この新プランは一部のライトユーザーを想定したものだ。決して多くのユーザーのニーズを満たすものとはいえない。乗り換えられるユーザーは一部に限られる見通しだ。
というのは、データ通信量の上限が1ギガバイトでは、若い世代を中心に動画視聴やゲーム、テザリングなどでスマホのデータ通信を多用する人のニーズを満たせないからである。また、新プラン契約の前提になる期間2年の“縛り”が嫌だという人や、ほとんど通話はしないので月額1700円の定額ではなく使った分だけ精算する仕組み(従量制)にしてほしいという人もいるはずだ。