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総務官僚には、今回の論議を一過性のもので終わらせず、継続的に取り組む選択肢があった。時間をかけて携帯電話市場の正常化を狙うのならば、首相の指示を盾に規制を復活する好機だったのだ。だが、官僚たちはそうしなかった。
取材してみると、突然の首相指示に戸惑う声や、今さら携帯電話会社と事を構えて軋轢を起こしたくないという声などさまざま。価格競争を促せば、日本の携帯電話独自の工夫ができなくなり、グーグルやアップル、マイクロソフト、フェイスブックといった米国企業を利するだけと、競争政策に否定的な声も聞かれた。
しかし、料金の高止まりや販売奨励金への料金の転用、携帯ショップの乱暴な営業姿勢などは、競争政策というよりは消費者行政の問題である。そして、これらを是正するためにも規制権限は必要である。
そこで提案したいのが、かつて固定電話の規制体系の整備前に導入された「接続会計」制度を、携帯電話分野で試すことだ。
この制度は情報開示の一環で、通信網を新規参入事業者に開放(接続)する際の原価をガラス張りにする。今なお、NTTの東西社は開示を続けているが、携帯に導入すれば行政やライバル、ユーザーが携帯3社の懐事情を把握する手掛かりになる。育成が課題になっているMVNO(仮想移動体通信事業者)向けの接続ルールづくりにも役立つし、利用者が支払う通信料金の安易なセールスへの転用にも歯止めをかけやすくなる。目に余るようならば、本格的な規制権限の復活を、国民的な議論の俎上に上げればよいだろう。
今一度、安倍首相には、継続的に携帯問題の正常化を目指すよう指示してもらう手があるのではないだろうか。
(文=町田徹/経済ジャーナリスト)
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