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町田徹「見たくない日本的現実」

利用者メリットなしのソフトバンク新料金…今こそ「原価ガラス張り」方式を導入すべき

文=町田徹/経済ジャーナリスト

 ソフトバンクに続いて、NTTドコモとKDDI(au)が近く、それぞれの新料金プランを公表する見通しだが、両社ともソフトバンクと似たり寄ったりの内容になる可能性が大きい。もうひとつの課題である、端末向けの過大な販売奨励金の是正も、隔靴掻痒の結果に終わる公算が高い。

首相指示の真の狙い

 ここで、一連の騒ぎの発端になった昨年9月の経済財政諮問会議における安倍首相の指示を振り返ってみよう。それは、「携帯料金等の家計負担の軽減は大きな課題である。高市総務大臣には、その方策等についてしっかり検討を進めてもらいたい」というものだった。明らかに首相の趣旨は、一部の人しか恩恵をこうむらない割安料金プランの創出ではなくて、ユーザー全体の料金負担の軽減にあったはずである。

 今回の新プランの発表で、首相の指示が充足されたと考えるのは早計だろう。国から無料で割り当てられる周波数という高い参入障壁に守られながら、携帯大手3社はそろって日本企業のトップテンに入る収益を稼ぎ出している。自由な競争にさらされる一般企業とは話が違う。認可業種がこれほどの業績を継続的に上げていれば、提供しているサービスの料金が高止まりしていると見なすのは当たり前のことである。他の産業の売り上げを損ねていると考える経営者も少なくないはずだ。

 そのほかにも、携帯電話には多くの問題がある。端末購入代金の補助や料金プランへの加入に当たって消費者の選択の自由を制限する“2年縛り”が横行していることはもちろん、携帯電話会社の費用科目からでなく、利用者が支払う料金の科目から販売奨励金の原資がねん出されていることや、誤解を招きかねないセールストークを含めて、あの手この手で端末を乗り換えさせようとする携帯ショップの強引な営業姿勢など、手付かずの問題が山積みなのだ。こうした問題は、放置できない。

「接続会計」制度を復活すべし

 そこで今一度、料金高止まりが起きた原因と、今回の値下げ議論が中途半端に終わった原因を考えてみよう。

 答えは明白だ。旧郵政省時代の1990年代半ば、関東地域で7社体制(PHSを含む)ができるなど競争が進んだことから、総務省が料金規制権限を放棄したことに遠因がある。その後、淘汰が進み大手3社体制に収れんしていく中、新規参入の促進に失敗したにもかかわらず、規制権限の復活を怠り、大手3社が寡占を強めるのを許したことが元凶なのである。今回は権限もノウハウも持ち合わせない政府が異例の介入をし、強制力のない要請をしたのだから、実効性が乏しいのは当たり前である。

町田徹/経済ジャーナリスト

町田徹/経済ジャーナリスト

経済ジャーナリスト、ノンフィクション作家。
1960年大阪生まれ。
神戸商科大学(現・兵庫県立大学)卒業。日本経済新聞社に入社。
米ペンシルべニア大学ウォートンスクールに社費留学。
雑誌編集者を経て独立。
2014年~2020年、株式会社ゆうちょ銀行社外取締役。
2019年~ 吉本興業株式会社経営アドバイザリー委員
町田徹 公式サイト

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