BRICSはどこへ?
BRICSという造語をつくったのは、確か米大手証券会社ゴールドマンサックスであったと思う。21世紀に入るや否や、この言葉は新興国成長のブームに乗って一躍世界を席巻した。当初、ある企業の海外企画担当幹部からこの言葉を聞いたとき、「なぜレンガが世界成長のキーワードなのだろう?」と首を傾げたものだ。これが当時の成長拠点ブラジル、ロシア、インド、中国、そして南アフリカを指すことを知るのにそれほど時間を要しなかった。
今日、この言葉の色褪せ方が激しい。ブラジルは2016年のオリンピック開催が心配されるまでになっている。エネルギー資源ビジネスに大幅に偏っているロシアは、エネルギー価格低迷のなかで、プーチン大統領が自国経済の不調を明言している。中国はバブル崩壊の噂が絶えない。南アフリカはそもそもこの仲間に入っていたのかさえ定かではない。
一方、インド経済はこれら新興国の不調とは無縁であるかの様相である。7-9月期の国内総生産(GDP)成長率は7.4%だというから健在そのものだ。製造業の伸びが寄与しているという。
製造業主体に転換するインド経済
インドネシアでの新幹線プロジェクト争奪戦で中国に敗北した余韻も冷めやらぬ12月12日に、日本とインドの両首脳はムンバイ―アーメダバード間(505キロメートル)への日本方式新幹線導入に合意した。新幹線関連産業のみならず、日本経済全体にとって大きな朗報である。今後、これをきっかけにして、鉄道だけでなくインドのインフラ整備において日本企業の出番が増えることは間違いないだろう。
インド経済といえば、英語と数学の能力を背景にしたIT産業が主役というのがかつての相場だった。しかし、中国を超える人口規模への成長を背景にした、いわゆる「人口ボーナス」の追い風が吹きまくっており、近年の成長は製造業が主導するかたちに転換している。中間層の成長により家電や自動車市場が拡大しており、そのための生産が拡大し続けているのだ。
インド市場と日本企業
日本企業は、世界のテレビ市場で韓国企業などにかなり追いつめられているが、インド市場では違う。ソニーのブラビアが、韓国のサムソン、LGを相手にトップシェア争いに堂々と参戦している。