社内暴力に内紛――。どこかのブラック企業の話のように聞こえるが、れっきとした名門金融機関での話だ。
多摩信用金庫で、また騒動が起きている。多摩信金といえば、全国信用金庫協会の副会長であり、東京都信用金庫協会の会長も務めていながら、佐藤浩二会長が暴力団組長の葬儀に出席していたことが発覚。金融庁がコンプライアンスや経営のガバナンスに問題ありとの烙印を押し、1年を超える検査で改善を求めたが、十分な対応策は出てこなかった。
当局の思惑は、責任を取って佐藤会長が職を辞することにあった。特に協会の代表者を辞するのは当然と考えていた。しかし、佐藤会長はいまだにその地位に居続けている。
トップにコンプライアンスやガバナンスが効かないのであれば、組織も腐りだす。多摩信金では地元自治体から販売委託を受けていたプレミアム商品券を、販売前に職員が購入するなどの不正が発覚した。地域密着を掲げる信金として、あからさまに地域を裏切る行為に批判が渦巻いた。
当局は露骨に多摩信金を敬遠する姿勢を示し始めた。協会が主催で行われる勉強会などでは、当局者の出席数が減少し、懇親会に出席せずに帰る当局者が相次いだ。昨年12月7日に行われた東京都信用金庫協会の経営者懇談会では、例年10人近い当局者が来賓として出席していたが、当日の出席は3名だった。それも、経済情勢などの話を30分程度行い、食事を伴った懇親会には誰も出席することもなく足早に帰って行った。翌8日には多摩信金の地元である協会の城西多摩支部の懇談会が開催されたが、こちらも同様に当局者は講話だけを行い、懇親会に出席することなく帰っていった。
こうした“お上”から敬遠される状態が続いていることを受け、さすがに業界内から多摩信金への批判が出ているが、当の多摩信金と佐藤会長は「どこ吹く風」の姿勢で、むしろ当局批判とも取れるセリフを口にしているという。
こうした状況に嫌気が差した理事が退職を申し出るものの、これがまた内紛の火種になる始末。役員の戦線離脱は“敵前逃亡”とばかりに問題となっている。