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ルディー和子「マーケティングの深層と真相」(2月29日)

「モノを持たないシンプルな暮らし」を主張する人々は、なんでも買える金持ちという事実

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黒のタートルネックを愛用した故スティーブ・ジョブズ(「Wikipedia」より/Kyro)

 1月に発表されたユーロモニターのレポート「世界の消費者、2016年の動向」を読んでみた。ユーロモニターはロンドンを拠点とするリサーチ会社で、世界210カ国781都市の消費者や産業データを1997年から蓄積・保存し分析している。

 このレポートを読むと、グローバル化が進むなか、どの国の消費者も考えることや行動が似てきているという感想を持つ。もう少し厳密にいえば、どの国でも、ある程度の規模の都市の住民は、消費者として同じような傾向を示すようになっているということだ。

 レポートでは、最新動向として以下の10点を挙げている。

(1)矛盾する購買行動
(2)時間を買う
(3)高齢化(エイジングに挑戦する消費者たち)
(4)社会問題への関心
(5)不明瞭になる性差
(6)安全で自然な食べもの(また、食品廃棄をなくすようなグリーンな行動)
(7)精神的健全さ(心の問題)
(8)デジタル機器依存症
(9)安全を守るための消費
(10)旺盛な消費をみせる独身者(一人用の旅行パッケージの人気。姪や甥に浪費する叔父、叔母)

『合理的なのに愚かな戦略』(ルディー和子/日本実業出版社)
 似ているとはいっても、地域によって程度の差が出てくるものもある。たとえば、(9)の「安全を守るための消費」では、ガードマンを雇うのはブラジルとかメキシコその他の中南米諸国が圧倒的に多い。空気清浄機を買うのは中近東やアフリカで世界平均の2倍以上だ。日本は、こういった面での消費は少ないほうだろう。

 アパレルメーカーや小売業者の関心を呼ぶのが、(5)のジェンダーの境がぼやけている点だ。女優のメリル・ストリープは、映画祭の授賞式にフェミニンタッチの黒のタキシード姿で登場し、「アンドロジニアス・ルック」だと話題になった。アンドロジニアスは両性具有と訳される。ユニセックスのことではないかと思うかもしれないが、微妙に違う。ユニセックスはあまり性を感じさせないが、アンドロジニアスはセックスアピールを強く感じる。

 アパレル産業だけでなく、おもちゃにも男女の差がなくなってきている。これも、男女共用のものをつくればいいかというと、そうでもない。女の子用のサイエンスおもちゃ、兵器好き女子のためのピンク色の銃器といった具合に、マイクロセグメンテーション(区分の細分化)が進み、一つひとつのセグメント規模はますます小さくなる。