ビジネスジャーナル > 企業ニュース > 「モノを持たない暮らし」に潜む現実  > 3ページ目
NEW
ルディー和子「マーケティングの深層と真相」(2月29日)

「モノを持たないシンプルな暮らし」を主張する人々は、なんでも買える金持ちという事実

文=ルディー和子/マーケティング評論家、立命館大学教授

 たとえば、パソコンの反応が遅いとイライラする。米国ソフトウェア会社のアドビが15年末に実施した日本を含めた6カ国調査では、ネットで情報を得ようとするときの消費者の待ち時間への耐性が低くなっていることが明らかになった。たとえば、デジタル機器を使っていて、我慢できないことがあって見るのをやめる人は、米国で92%、ドイツ92%、フランス92%、オーストラリア90%、英国89%、日本80%となっている。我慢できない理由をみると、「表示に時間がかかっているので見るのをやめた」が41%、「表示された内容が長すぎるのでやめた」が41%となっている。

 サイトにアクセスしてから内容が表示されるまでに8秒以上かかるとユーザーはほかのサイトに行ってしまうという「8秒ルール」は、もはや通用しない。実際には、その半分の4秒でなくてはならないという声もある。常に時間を気にし、イラつきやすい消費者の姿が実感できる数字だ。

 時間に追われる消費者は、また心の問題(自分の精神的健全さが損なわれていること)を懸念する消費者でもある。これはユーロモニターのレポート(7)にあたる。心の平安を保つために、シンプルな暮らしに憧れる人たちもいる。

ミニマリストは裕福な人だからこそかっこいい

 ミニマリストになることが世界の都市部で流行している。モノを所有する欲を捨て、シンプルな暮らしをし、精神的により充実した生活をする。“Less is More”で、「少ないことがより多いことにつながる」というわけだ。

 ミニマリストに憧れる理由にはいくつかあるが、時間に対する観念もそのひとつだろう。あまりに多くのモノを持つことは掃除、整理整頓に時間がかかる。また、ミニマリストになろうと決断すれば、モノを買わなくなるわけで、ショッピングにかかる時間も減る。日本で流行している断捨離は、人生を終える前に身辺整理をしなくてはと切実に考える高齢者が実行した感もあるが、『人生がときめく片づけの魔法』(近藤麻理恵/サンマーク出版)が世界的ベストセラーになったのは、年齢に関係なく、シンプルな暮らしを促進するためであろう。

 モノだけでなく、人生のごたごたを片づけることはミニマリストになる第一歩だ。

ルディー和子/マーケティング評論家

ルディー和子/マーケティング評論家

早稲田大学商学学術院客員教授。
国際基督教大学卒業後、結婚・渡米を経て帰国、
米化粧品会社のエスティ ローダー社で働きながら
上智大学国際部大学院経営経済修士課程修了。
エスティ ローダー社ではマーケティングマネジャー、
出版社タイム・インク/タイムライフブックス社での
ダイレクトマーケティング本部長を経て、
マーケティング・コンサルタントとして独立、
自身の会社ウィトン・アクトンを設立
ルディー和子オフィシャルブログ

Twitter:@shouhigaku

「モノを持たないシンプルな暮らし」を主張する人々は、なんでも買える金持ちという事実のページです。ビジネスジャーナルは、企業、, , , , の最新ニュースをビジネスパーソン向けにいち早くお届けします。ビジネスの本音に迫るならビジネスジャーナルへ!