2月19日の東京株式市場で、エイチ・アイ・エス(HIS)の株価が一時前日比10%安と急落した。連結利益の半分近くを稼ぐ子会社のハウステンボスが、2015年10~12月期決算で入場者が減少し、経常減益になったことが原因だ。「安定的に利益を上げてきたテーマパークが失速したら、業績に大きく影響する」と投資家が警戒し始めたということだ。
だが、関係者の反応は少し違った。テーマパーク・ハウステンボス(HTB)がHISの大黒柱に育つと予想できた人は少ないのではないだろうか。
HISは10年、HTBを運営するハウステンボスを傘下に収めた。当時HTBは死に体同然だったため、HISのお荷物になるとの見方が多かった。ところが軌道に乗り、HISの屋台骨を支えるまでになった。
澤田秀雄氏が再生の立役者
HIS創業者の澤田秀雄氏がHTB再生の立役者である。HTB内に居住して、陣頭指揮を執った。「花の王国」「光の王国」「ゲームの王国」「音楽とショーの王国」「健康と美の王国」と、毎年変わる王国シリーズで集客に努めた。春、夏、秋、冬のシーズンごとにつくり出す、世界最大級といわれる1100万のイルミネーションが評判になった。
ほかにも、話題づくりには知恵を絞っている。15年7月には、ロボットが接客するホテル「変なホテル」を開業した。
HTBの15年9月期決算(単独)の入場数は前期比11%増の310万人。このうち海外からの観光客は15%増の25万人。宿泊者数は10%増の33万人。売上高に当たる取扱高は13%増の297億円、営業利益は21%増の89億円、純利益は16%増の60億円を上げた。
HTBは、オリエンタルランドが運営する東京ディズニーリゾート、ユー・エス・ジェイが運営するユニバーサル・スタジオ・ジャパンという“東西の雄”に次ぐ第三極のテーマパークとして復活した。
HTBの15年10~12月期(同)の取扱高は、前年同期比2%減の78億円、経常利益は6%減の27億円だった。株式市場で注目されたのは入場者数が81万人と3%減った点だ。9月の大型連休の反動が出たほか、前年同期にあった大型団体旅行がなかったことが影響した。
HTBの入場者の9割以上は日本人が占めているため、訪日外国人の動向はさほど関係がない。入場者の減少がストレートにテーマパーク事業の成長の鈍化の兆しと受け止められたわけだ。
無人島を取得
HTBの入場者減は親会社のHISの業績に影を落とした。HISの15年11月~16年1月期の連結決算の売上高は4%減の1241億円、純利益は29%減の19億円だった。
主力の海外旅行では円高が進み為替差損を3億円計上したことに加え、原油安を受けて燃油サーチャージ収入が減った。海外事業は売上高が前年同期比4%減の1083億円、営業利益は6%増の25億円。一方、ハウステンボスグループ6社の売上高は0.2%減の84億円、営業利益は9%減の25億円だった。
テーマパーク事業は本業である海外旅行事業と肩を並べるまでになった。お荷物どころかドル箱になった。しかし、収益力が鈍化しているのは事実だ。
澤田氏は集客力を高めるために、どんな仕掛けを考えているのだろうか。ハウステンボスは1月、HTBから南西約6キロにある無人島、長島を取得した。具体的な事業計画はこれからだが、ほかの無人島を買うことも検討している。複数の無人島を船で結びリゾート基地にするアイデアを温めている。
ハウステンボスの16年10月期(通期)の連結業績予想は従来見通しを据え置いた。売上高は前期比10%増の5900億円、純利益は13%増の123億円を計画している。
それにしても、HTBの入場者数がHISの株価を左右するほどに成長するとは、HISにとって嬉しい誤算だったのではないか。
(文=編集部)