4月1日、電力の自由化がついにスタートし、電力戦国時代が到来した。各地に誕生した電力会社はまさに下剋上を狙う戦国武将そのものだ。これまで9社が独占していた市場に200社以上が乱入、熾烈な戦いが展開される。
資源エネルギー庁の関係者などによると、登録小売事業者は266社で、関東、中部、関西の3大都市圏が全体の8割弱、関東圏が半数以上、東京は110社が新規に電力を販売することになる。つまり電力戦国時代は東京を中心とした首都圏からのろしが上がり、東京電力管内約2000万世帯が草刈り場になる。
すでにガス、石油、通信、小売り、インターネット関連企業、カード、鉄道などさまざまな企業が参入を表明。さらに地域独占の壁が取り除かれることにより、地域を独占してきた地方の大手電力会社の間でも垣根を超えた戦いが行われることになる。まさに電力国盗り物語だ。果たして勝ち残るのはいったいどこなのか。そして、今後の日本の電力市場はどうなるのか。
注目の東京ガスの動き
日本最大の地域電力会社である東京電力は送電会社、東京電力パワーグリッドを完全分離させ、燃料・火力発電事業の東京電力フュエル&パワーや小売り事業の東京電力エナジーパートナーとともに、持ち株会社の東京電力ホールディングス傘下にぶら下げるかたちとする。
関東近県にあるカナジュウ・コーポレーションや河原実業、新日本ガスといったプロパンガス会社、静岡のエネルギー関連企業TOKAI、TポイントのCCCカルチュア・コンビニエンス・クラブ、Pontaカードのロイヤリティマーケティング、リクルートホールディングス、ソフトバンク、ソネット、USEN、ビックカメラなどと組み、関東近県の市場を守る戦略だ。
この牙城を崩そうと虎視眈々と狙うのが、異業種や他地域の電力。なかでもこれまで地域独占だった都市ガスは2017年に自由化を控えており、競争が厳しくなる。自由化の進む電力市場に進出してマーケットを拡大したいところだ。
東京ガスは20年までの中長期的な戦略のなかで、発電能力は現状の約160万kWから20年に約300万kWに引き上げるとしたほか、電力販売量を現状の約100億kWhから20年に約300億kWhへ引き上げる方針を掲げている。
すでに神奈川県横須賀市のほか、千葉県袖ヶ浦市に自前の発電所を持っており、東京電力に対して電力を卸売りしているほか、NTTファシリティーズや大阪ガスとともに出資してつくった新電力(PPS)の「エネット」を運営している。このほかJXエネルギーとは神奈川県川崎市に、昭和シェルとは横浜の扇島に発電所をつくり、法人向けの発電事業に取り組んできたが、家庭用の電力市場にも大きな意欲を燃やしている。