人材エージェント業界大手インテリジェンスの調査によると、転職の求人数と求職者数は共に2008年の調査以来過去最高レベルになっています。15年に転職者数は6年ぶりに300万人を超え、就業人口の5%を上回る見通しです。著者が関係者から聞いた話から推察するに、この5~10年の特徴として、大手企業による中途採用が増えているように感じます。
背景としては、必要な機能や強化しなければいけない機能について社内には人材がいないので外に探し求めるというよりも、バブル崩壊後やリーマンショック後の氷河期に新卒採用を絞っていたために、いびつな年代別人員構成になっていることがあるようです。その歪みを修正するために、20~30代、場合によっては40代前半の世代を埋めているようにみえます。
また、転職エージェントという産業の認知度が高まり、企業も個人も利用者が増えることによって、相性のいい採用ができる可能性が高まっているという「機会の増加」も挙げられるでしょう。
受け入れる側にじっくり選ぶ時間はない
しかし、大手企業や有名企業においては、中途採用希望者を受け入れる側、つまり面接する側のほとんどは、自分自身が転職をしたことがありません。優秀な人材が多いためにきちんとした判断力は備わっていますが、自分が転職した経験値に基づいて採用の可否を判断することができません。それは採用を希望している部門だけに限らず、人事部門においてもそうです。
中途採用においては、イレギュラーなかたちで選考を進めなければならないこともあります。採用条件を「●●の経験者」などと限定する場合、その条件に合致する人がいつエントリーしてくるかわかりません。ですので、時期を区切って採用したり、面接回数や時間をきちんと決めて採用プロセスを固めるのは、あくまで事務手続き上の利便性を優先するための方策なので、本来はもっとフレキシブルでいいはずです。
良い人材が見つからなければ無理に採用するべきではありませんし、応募者がどんな価値観を持ってどんなことをしてきたのか、もし入社した場合に取り組んでもらう仕事の相性とどれだけフィットしているかということに確信が持てないのであれば、何度でもさまざまな社員が面接して確認していくべきでしょう。