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黒田尚子「『足るを知る』のマネー学」

実母と義母が同時に要介護に…増加する多重介護、こうすれば無理なく行える!

文=黒田尚子/ファイナンシャルプランナー
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多重介護の“予測できないことが同時に起こる”難しさ

 東京在住のAさん(61歳)は、フリーのカメラマン。父親は数年前に亡くなり、母親(85歳)は要介護2で愛媛県の自宅でひとり暮らしをしている。さらに、Aさんの妻の母親(90歳)も要介護状態だ。実母と義母の介護を積極的に行うAさんは、介護生活についてこう語る。

「私は母と離れて住んでいるので直接的な介護はできません。実家の近くに、弟夫婦が住んでいるので、掃除や洗濯など日常生活の面倒は、弟の妻がしてくれています。それでも、母には毎日電話をして体調を聞いたり、担当ケアマネジャーさんと相談して、ケアプランを決定したりするのは私がやっています。もうそろそろ、自宅でひとり暮らしをするのは心配なので、入所できそうな施設を探しているところです。

 近くに住む義母の介護は、私と妻、妻のきょうだいで分担しています。義母は、妻のきょうだいと同居していますが、みんな仕事を持っていますのでね。私はフリーランスで比較的仕事の時間の融通もききますから重宝されています(笑)。もちろん、訪問介護サービスや訪問看護、デイサービスなんかも使っています」

 通常の介護に比べ、多重介護の難しさは、「予測できないことが同時に起こること」だ。Aさんの場合も、実母と義母の体調が急に悪化し入院することになったときに、どちらを優先させるべきか慌てたという。

「私の場合は、多重介護といっても、一緒に介護をしてくれる家族がいますのでね。これがひとりだったら途方に暮れたでしょう」

もしも、多重介護になったらどうするか?

 
 多重介護のように同時多発的に要介護者が出た場合、とにかくひとりがすべてを引き受けるのは絶対避けたい。ほかにも一緒に介護を担ってくれる人がいないかを真剣に考えてみることが大切だ。前述のAさんも、「確かに、自分の親も妻の親も要介護状態で、最初は正直しんどいなと思いましたよ。でも、ある程度それがルーチンワークになってみんなでやれば、そんなに負担と感じなくなるものなんです」と話す。

 Aさんのように公的介護サービスを上手に活用しながら、家族や周囲が役割分担しながら介護を無理なく続けられるようなシステムづくりを心掛けるのがベストだ。

 その際に、介護方針など重要な事柄に関する「キーパーソン」を誰にするかをあらかじめ明確にしておくことも重要である。キーパーソンを決めておけば、役割分担も比較的スムーズにいきやすい。

黒田尚子/ファイナンシャル・プランナー

黒田尚子/ファイナンシャル・プランナー

 1969年富山県富山市生まれ。立命館大学法学部卒業後、1992年、株式会社日本総合研究所に入社。在職中に、FP資格を取得し、1997年同社退社。翌年、独立系FPとして転身を図る。2009年末に乳がん告知を受け、自らの体験から、がんなど病気に対する経済的備えの重要性を訴える活動を行うほか、老後・介護・消費者問題にも注力。聖路加国際病院のがん経験者向けプロジェクト「おさいふリング」のファシリテーター、NPO法人キャンサーネットジャパン・アドバイザリーボード(外部評価委員会)メンバー、NPO法人がんと暮らしを考える会理事なども務める。著書に「がんとお金の本」、「がんとわたしノート」(Bkc)、「がんとお金の真実(リアル)」(セールス手帖社)、「50代からのお金のはなし」(プレジデント社)、「入院・介護「はじめて」ガイド」(主婦の友社)(共同監修)など。近著は「親の介護とお金が心配です」(主婦の友社)(監修)(6月21日発売)
https://www.naoko-kuroda.com/

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