4月、日清食品の「カップヌードル」のテレビCM放送が開始から1週間ほどで中止になったことが話題となった。
日清にとって本当に難題なのは、クレーマーからの批判ではなく、同社を応援してくれる有名人の声が思いのほか大きくなってしまったことで、「引くに引けなく」なってしまったことだ。「負けるな」「初心を貫け」「日清は正しい、クレーマーが間違っている」などと応援され、いつの間にか消費者と喧嘩をしなければならないような状況に追い込まれてしまった。社内でも「やっぱり続ければよかったんだ。良識ある人はわかってくれているんだ」などと中止反対派の声が大きくなっているのではないか。
日清は、同じコンセプトのCMは継続するとしているが、今回中止になったCMより柔らかくなると、応援してくれていた人が「なんで妥協するんだ。もっと過激にすればいいのに」となり、その逆だと「そこまでやれとは言わなかった」となる可能性がある。
同じようなCMを放送して売上が一時的に上がれば、日清は応援派の人に「そらみろ、俺が言ったように間違ってなかっただろう。売れたということは、消費者が支持してくれたということだ。クレーマーに勝ったんだ」と言われる。
しかし、そもそも日清は消費者と対決したいわけではないだろう。たとえその相手が「クレーマーだとしても」である。ましてや「勝った」「負けた」と言われたり、「信念を貫く」「貫かない」という問題にしたいわけでもないはずだ。にもかかわらず、「消費者に叩かれたからCMを中止にした」「消費者から批判されたから中止した」という言い方をされるのは、日清としては非常に迷惑だろう。日清としては、「消費者の皆さまから、多くの貴重なお声、ご指摘をいただいたので、検討した結果中止させていただきました」というかたちにしたい。
消費者の区別なし
消費者を相手にする業界では一般的に、クレームを「批判」ではなく「苦情」「ご指摘」「ご要望」「ご意見」「ご忠告」と呼ぶ。消費者をクレーマーと呼んだり、「消費者に叩かれた」「消費者に批判された」というような消費者に対して失礼な表現は使わない。「貴重なご指摘、ご意見をありがとうございました」とする。
また、企業にとって消費者とは、自社製品の購入者以外も含む。なぜなら、これから買ってくれるかもしれないからだ。新規のお客が増えれば、企業にとってこんなにありがたいことはないので、消費者を区別することはない。ましてや、消費者を一方的に批判者、因縁を付けている人だと決めつけることなどしない。