それを十羽ひとからげにクレーマーだと決めつけ、消費者を不愉快にさせることを言う第三者の人たちは、企業にすればまさに「ありがた迷惑だ」。しかし、これも口が裂けても言えない。なぜなら、そういう人たちも同じ消費者、お客だからだ。
消費者がヘビークレーマー化の恐れ
もうひとつ、消費者を相手にする企業が注意しなければならないことがある。
カップヌードルという若者向け商品の特徴からすると、CMに対しクレームを言っている人たちは、それを食べながらパソコンや携帯電話に向かって入力している可能性がある。そんな日清からすると貴重なお客に、「日清は有名人を使って、『批判している人たちは客ではなくて、ただ因縁を付けているチンピラだ』と代弁させている」と誤解される可能性がある。もちろん、「そんなことを日清がすることはない」と頭でわかっていても、自分たちの存在を否定されると偏屈になるのが消費者だ。
そう誤解した消費者が、手も付けられないようなヘビークレーマーになってしまう危険性がある。そうなると、今度はほかのメーカーのカップ麺を食べながら、嵐のごとく不平不満をぶつけてくるかもしれない。消費者を相手にしている企業にとって、ヘビークレーマーをひとりでも少なくすることは命題である。
さらに心配なことは、ここまで「あのCMは良かった」「好きだった」という有名人を含む消費者の声が大きくなると、今まで気にしていなかった消費者が「どんなCMだったかな」とインターネットで見るようになる。そして「あの人が『良かった』と評価するということは、逆に『悪かった』と思う人が多いのではないか。どんなCMかじっくり見てみようかな」という視点で見る場合と、そうではない(素直に見る)場合では、印象が変わってくる。
「ああそうか、ここがみんなが嫌だと言っているんだ」
「すごい上から目線だし、確かに消費者をバカにしているみたい」
「女性を馬鹿にしている。女性はカップヌードルを食べないと思って、無視したのかな。不愉快だと感じる人がいるのも無理ないな」
「なんでこんなCMをつくったのかな。やっぱり大企業だから、何をやっても許されると思っているんだろうな」
「応援する声が強くなって風向きが変わってきたから、有名人使って褒め殺し作戦に出たんだ」
日清は消費者からこのように思われる危険性がある。