7月28、29日に開催された日本銀行の金融政策決定会合に対して、多くの投資家が「質・量・マイナス金利」の3次元の追加緩和に期待していた。ところが、日銀は思い切った追加策を温存した。それは、多くの市場参加者の失望につながった。特に、外国人投資家は追加緩和への期待を強め、積極的に日本国債を買い込んできた。それが、国内投資家の期待を高めることになった。
しかし、日銀は期待を裏切る格好でETF(上場投資信託)の買入れ増額を軸とする追加緩和策を決定した。この決定は、投資家にとって大きな失望だった。そればかりか、投資家の多くは「この決定を日銀の限界を示すもの」と考え始めた。こうして、8月に入ってから国債が売り込まれ金利上昇が続いた。
9月の決定会合で日銀は、経済や物価の情勢、これまでの金融政策の効果を総括的に検証するとしている。この検証が何を目指しているか、今のところ詳細はかわらない。日銀が金融政策の限界を認め修正を進めるか、さらなる緩和を志向するか、どちらの可能性もある。
8月中旬に入ると、金利の上昇にはブレーキがかかりつつある。その背景には、今後の金融緩和が意識され、国債保有に対する安心感が広まったことがある。もっとも重要なポイントは、日銀と市場の信頼関係が再構築できるか否かだ。
決定会合後の国内債券市場の動き
7月下旬の日銀決定会合以降、日本国債市場では日銀の決定に失望した投資家が国債を売り、金利の上昇が急速に進んだ。特に顕著だったのが20年物、30年物、40年物の超長期の金利上昇だ。
たとえば7月28日、0.150%だった20年物の金利は、8月8日には0.325%まで急上昇した。これは追加緩和を見込んでさらなる金利低下を見込んでいた多くの投資家が、期待を下回る日銀の決定に失望し、買い込んでいた国債を一斉に売る動きに出たことが重要な要素だ。
これまで20年を超える年限物では、利回りがプラスで推移してきた。それだけに多くの投資家が、さらなる金融緩和が進む前に、少しでもプラスの利回りを確保しようと躍起になっていた。その結果、日銀の追加緩和に対する思惑が連鎖反応を起こし、決定会合直前には、「20年物の金利がマイナス水準に落ち込むのも時間の問題だろう」という見方さえあった。