その分だけ、決定会合の結果に対する失望は大きかった。これまでの市場環境であれば、金利が上昇した後、数日程度で金利上昇後の安値を確保しようという押し目狙いの動きが金利上昇圧力を緩和させてきた。
ただ、今回の状況は異なる。8月9日に30年物の入札が控えていたため、投資家が動きづらかったのは確かだ。この入札は多くの買い意欲を集め、市場の安心感を支えるものだった。それでも、入札後の30年物の金利には上昇圧力がかかった。
入札が良好に消化され需給の良さを確認するだけでは、足許の市場は落ち着きづらくなっている。いってみれば「周囲が買うから自分も買う」という発想では相場は動きづらくなりつつある。8月中旬に入って30年物、40年物の金利にも買いが入り始めているが、それがどの程度続くかは慎重にみるべきだろう。
急接近する財政・金融政策
7月の決定会合後、投資家の失望から金利が急上昇するなかで、8月に入ると新しい要因が金利の上昇に作用し始めた。それは、政府が発行する国債を日銀が引き受け、引き換えに政府にお金を渡す「財政ファイナンス」への懸念だ。
8月2日、日銀と財務省が政策の連携を重視する考えを出したことは無視できない。7月の決定会合で日銀は、現行の金融政策は政府の経済対策との親和性が高いとの見解を示した。その上で政策連携が示されたため、多くの市場参加者は日銀と政府がこれまで以上に近づくことを懸念し始めている。それは、財政政策と金融政策の境目が不明瞭になることだ。
今日の金融政策の理論では、中央銀行は政府から独立した機関であることが重視され、それなりに尊重されてきた。仮に、政府が日銀に近づきすぎて通貨を供給する権能が備わると、政府(政治家)が望むままにお金の供給が制限なく進む恐れがある。それが行き過ぎると、急速な物価上昇など経済、社会にはマイナスの影響が出やすくなる。財政ファイナンスは法律で原則禁じられている。この点は、政府、日銀関係者からも指摘されてきたことだ。
日銀の黒田東彦総裁は、「9月の総括的検証は金融緩和の修正や縮小を念頭に置いたものではない」と述べた。そして、今後の追加緩和は可能とも強調した。一方、政府は経済対策の資金を調達するために、40年国債の増発を考えているようだ。