総務省が、端末の実質0円販売を事実上認めなくなったことを受け、大手キャリアからMVNO(仮想移動体通信事業者:自社でモバイル通信のネットワーク設備などを持たずに、大手キャリアの回線を一部買い上げてサービス提供する事業者)などの安価なサービスに乗り換えるユーザーが増えているようだ。このチャンスをものにするべく、MVNOやワイモバイルが攻めの戦略を次々と打ち出しているが、一方でコンシューマー市場から撤退するMVNOも現れている。低価格を狙う通信サービスの現状を追った。
実質0円販売の事実上禁止が格安サービスを後押し
ここ最近注目されている、MVNOやワイモバイルなどの安価にスマートフォンが利用できる通信サービスが、今年に入ってから従来以上に活況を呈しているようだ。
その大きな要因となっているのが、大手キャリアがこれまで当たり前のように実施してきた端末の実質0円販売が、事実上できなくなったことである。昨年末に実施された「携帯電話の料金その他の提供条件に関するタスクフォース」の結果を受け、総務省は4月に「スマートフォンの端末購入補助の適正化に関するガイドライン」を打ち出した。
このガイドラインをベースとして、総務省が大手キャリアに対し、端末を過剰に安く販売することを厳しく取り締まるようになった。その結果、多くのユーザーは端末が安く買えなくなった一方で、毎月の通信料が大きく下がったわけではないことから、事実上、料金が値上げされたこととなる。そうした背景もあり、より価格の安いMVNOやワイモバイルのサービスへと移るユーザーが増えているのだ。
特にMVNOには大きな影響をもたらしている。もともとMVNOはデータ通信の価格が安いことから、ITに詳しい40代前後の男性がサブ用途として利用する傾向が強かった。だが先に触れた通り、現在ではメイン回線として利用する20~30代のユーザーが増加し、音声通話付きのSIMを契約する人が半数を超える事業者が増えるなど、ユーザー層や利用スタイルを劇的に変化させているのだ。
そうしたことから、MVNOやワイモバイルなどは、新しいユーザー層の獲得に向けたサービス提供に力を入れるようになり、サービス競争が急速に過熱している。その代表例といえるのが、定額で音声通話ができるサービスを提供するMVNOの増加である。