日本郵便はインターネット通販業者向けの決済子会社、日本郵便ファイナンスをIT(情報技術)大手、GMOインターネットグループに売却する。加盟店が集まらず赤字が続いたため撤退を決めた。
日本郵便ファイナンスは2014年4月の設立。日本郵便が85.1%、三井住友信託銀行が14.9%を出資し、インターネット通信販売を手掛ける事業者からクレジットカードなどの代金決済業務を引き受けている。
通販業者の多くはアマゾンジャパンや楽天などの大手通販サイトの決済サービスをすでに利用している。日本郵便ファイナンスの加盟店は数百社にとどまり、黒字化の見通しが立たなかった。
GMO傘下の決済代行会社がサービスを引き継ぎ、日本郵便ファイナンスは清算する。従業員は日本郵便と三井住友信託銀行のグループで引き取る。
日本郵便は人件費の負担が大きく低収益
日本郵政グループは15年11月、持ち株会社の日本郵政と金融事業会社のゆうちょ銀行、かんぽ生命保険の3社が同時に株式を上場した。
郵便事業を担う日本郵便は非上場企業だが、親会社の日本郵政の決算に業績は反映される。手紙やはがきの取り扱いが減り続ける郵便事業は、郵便局網の維持、週6日の戸別配達や郵便ポストの管理が義務付けられている。
郵便事業のジリ貧から脱するために15年5月、豪物流会社のトール・ホールディングスを6000億円で買収した。新規事業として通販業者向けの代金決済事業を始めた。しかし、黒字転換の見通しが立たず早々と撤退を決めた。
日本郵便の16年4~6月期連結決算の売上高は前年同期比23%増の8982億円、営業利益は63%減の32億円、純利益は87%減の44億円と増収減益だった。
買収したトール社を15年7月に連結化したため、前年同期比で売上高が1688億円増加した。トール社の寄与分は1543億円だった。しかし、トール社は減益となり、日本郵便に利益面で貢献することはなかった。
郵便・物流事業は、ゆうパック、ゆうメール、レターパックが堅調で70億円の増収となったが、人件費が膨らみ前年同期並みの58億円の赤字。その結果、日本郵便全体の営業利益は32億円にとどまった。
トール社の巨額買収に伴うのれん代の償却が重くのしかかる。15年6月末現在、トール社ののれん代は5321億円(暫定値)と公表していた。3610億円に減額になったとはいえ、償却負担は大きい。