日本で売上激減のあの伝統品、なぜ海外でバカ売れ?小さな一金属企業、なぜ海外市場開拓驀進中?
どのような世界でも、売れないことの言い訳は尽きない。
たとえば、ビジネスの世界においては、「景気が悪いから」「客が買ってくれないから」「ブランド力がないから」「中小企業だから」「特にこの地域は調子が悪いから」などである。
とりわけ、近年においては「地方は疲弊している」との声がよく聞こえてくる。こうした風潮を受け、地方創生なるものが高らかに掲げられ、担当大臣まで設置されている。もちろん、地方が元気になる重要性に異議はないものの、実際に行われているプレミアム商品券などの施策を見ると、単なる与党の票稼ぎといわれても仕方ないのではないだろうか。
また、不振にあえぐ中小企業のなかには、「大手企業が仕事を回してくれないから」といった言い訳をするところもある。確かに、長きにわたり、お互い助け合いながら日本の経済成長を支えてきたのかもしれないが、規模は小さくとも独立した一企業である限り、「○○が××してくれない」という言い訳は、経営者としてあまりにも情けない発言ではないだろうか。
一般に、厳しい立場に置かれているといわれることが多い地方部に所在する中小企業においても、大いに儲かっている、もしくは少なくとも自分たちの力でそうなろうと努力している企業は数多く存在している(『東京飛ばしの地方創生:事例で読み解くグローバル戦略』<山崎朗・久保隆行/時事通信社>参照)。
地方創生の重要なポイントのひとつには、こうした企業を徹底的に絞り込み、手厚い支援を行い、成長を促し、雇用を促進していくことが挙げられるだろう。
今回は、富山県高岡市に所在する瀬尾製作所の事例を踏まえ、地方の中小企業における経営戦略およびマーケティングに関して検討していく。
瀬尾製作所とは?
高岡市は、高岡銅器に代表されるように古くから金属加工が盛んな土地である。こうした高岡市に1935年に設立された金属加工メーカーが瀬尾製作所である。現在、従業員数は20名。長年にわたり銅器の部材、茶道具、仏具、建材などを扱ってきた。主として部品製造、もしくはOEM(相手先ブランド名での製造)を行うビジネスを続けてきた。