2016年の訪日外国人観光客が10月末に2000万人を超えた。年間での2000万人突破は初めて。政府は20年の目標に掲げる訪日客4000万人に向けて弾みをつけると鼻息は荒いが、すでにインバウンドバブルは転換点を迎えているとの見方が大勢を占める。大きな反動が来るかもしれないと、国内経済界は戦々恐々とする日々が続いている。
「16年は通年で2400万人超達成か」(観光庁筋)
訪日客は13年に1000万人を超え、14年1341万人、15年1974万人と右肩上がりに拡大してきた。今年は4月の熊本地震の影響が一時的に出たが、すぐに持ち直し、過去最高を更新した。「通年では2400万人程度に達する可能性がある」(観光庁関係者)との見方もある。
菅義偉官房長官も「あくまでも(2000万人は)中間点。まだまだやるべきことはたくさんある」と、年4000万人の訪日客を迎える環境の整備に意欲を示す。空港や港湾の容量拡大や外国人向け案内所の設置などを急ぐ方針だ。
「伸びてはいるが勢いはない」――爆買いの激減が意味するもの
一方で、客数は増えているものの、インバウド需要の質の変化を指摘する声も少なくない。日本銀行が10月17日に公表した地域経済報告(さくらリポート)では、各地域のインバウンド観光の動向を特集している。これが日銀担当記者の間で話題になった。記者向けのレクチャーでは担当者が「伸びてはいるが勢いはない」と公言。その後に開かれた大阪や名古屋など主要支店長の会見で、火消しに躍起になったからだ。
実際、この特集を読むとインバウンド需要を見込んだ「イケイケ」ムードは転換点を迎えている。観光地周辺に恩恵をもたらした「爆買い」は、全国的に影を潜める。「中国での関税率引き上げを受け、転売目的の代理購入業者の減少や親族一同から依頼された土産物のまとめ買いの減少などから、終息に向かっている」(本店や多くの支店から報告)。
関税引き上げで量の減少だけでなく、高価な商品の販売も鈍っているとの報告も散見された。「高額時計やブランド品の購買が減少したほか、代理購入業者の来店もほとんどみられなくなった」(大阪、京都、北九州ほかからの報告)といった見方や、「16年度に入ってからは、それまで好調だった100万円を超える腕時計や10万円程度の炊飯器等の売れ行きが芳しくなく、免税売り上げは減少している」(札幌、神戸、長崎ほかからの報告)など、旗色は一気に変わってきた。