10月14日の東京株式市場。カジュアル衣料「ユニクロ」を展開するファーストリテイリングの株価が一時、前日終値比1940円(6%)高の3万5090円と反発した。売買代金は568億円と前日の3倍に膨らみ、終値も3万4800円と5%高かった。今年の高値は1月4日の4万2200円である。
前日に2016年8月期連結決算を発表。前年より営業利益は2割減、純利益は半減した。他の企業であれば売り浴びせられるところだが、逆に買いが集まった。投資家たちの柳井正会長兼社長への信頼は厚いものがある。減益決算でも「柳井神話」は消えなかった。なぜなのか。
売上高目標を5兆円から3兆円に引き下げ
「世界ナンバーワンになるには、5兆円の売上高は必要だ。ひとつの目安として2020年度(に達成)を掲げていたが、今の現実的な売り上げから考えると3兆円が妥当だ」
柳井氏は5兆円の売り上げ目標をあっさりと撤回した。柳井氏が5兆円の売上目標を設定したのは09年9月。当時の売上高は6850億円。それを7倍強に引き上げて、「アパレル業界で世界ナンバーワン(になる)」と高らかに宣言した。ところが、今回、現実的でないとして3兆円に減額した。
「コミットメント未達」と批難されても不思議ではないところだが、そうはならなかった。柳井氏は、公言していた「65歳で引退」を反古にして社長を続けている。売上目標を引き下げたところでさほど驚きはない。柳井氏が中期の目標を軌道修正したのは、16年8月期決算(通期)が大幅な減益に沈んだからだ。売上高は前期比6.2%増の1兆7864億円、営業利益は22.6%減の1272億円、純利益は56.3%減の480億円だった。
大幅減益になったのは、売上高の4割を占める国内のユニクロ事業が振るわなかったからだ。既存店の客数が前年同月を上回ったのは2カ月だけ。原料高や円高を理由に14年に続けて15年も秋冬物を値上げしたが、これに顧客が反発。客離れが進んだ。
上半期(15年9月~16年2月)の国内ユニクロの営業利益は前年同期比28.3%の大幅減益。業績の失速を受け2月から夏冬物の一部商品を値下げした。これで4月以降は収益が持ち直し下半期(16年3~8月)の営業利益は前年同期比38.0%の増益。上半期の減益が響き、通期の営業利益は1024億円で12.6%減となったが、後半は持ち直した。