目下、ベストセラーとなっている『住友銀行秘史』(講談社)。反社会的勢力が中堅商社に群がり食い物にしたイトマン事件の内幕を、元住友銀行幹部でその後に楽天副社長も務めた國重惇史氏が、四半世紀を経て白日の下に晒した衝撃的内容が話題を呼んでいる。その國重氏が現在、会長兼社長を務める東証マザーズ上場企業、リミックスポイントも実のところ、いわく付きの企業として知る人ぞ知る存在だ。國重氏は今、いかなる“けもの道”に足を踏み入れているのか――。
「あれは大変な目に遭いましたよ」
國重氏がそう振り返るのは、福岡市内の不動産関連会社「伍稜総建」との間で進めていた融資話のことだ。11月2日、伍稜総建の2人の代表取締役ら関係者4人が、警視庁組織犯罪対策3課によって逮捕されている。三重県紀北町の砂利採取場の採石権をめぐり委任状を偽造するなどして、勝手に移転の登記を行ったとの容疑だ。伍稜総建の代表取締役らは暴力団関係者にカネを流そうとしていた疑いも持たれている。リミックスポイントは危うくそんな先にカネを貸すところだった。
國重氏が語るところによれば、顛末は次のようなものだった。発端は昨年春頃のこと。國重氏は知人を介して公認会計士の資格を持つ人物と会った。かつて買収案件で三井住友銀行から八十数億円を借り入れた実績があるとの触れ込みだった。昨年6月末、國重氏はリミックスポイントの会長に就任する(その後、昨年10月に社長も兼務)。以来、会計士出身のその人物はさまざまな取引案件をリミックスポイントに持ち込んだ。が、「あまり筋のいい案件はなかった」(國重氏)という。
融資実行寸前で危機回避
そうしたところ、今年1月になり件の人物が持ち込んできたのが伍稜総建との取引だった。その人物は伍稜総建の代表取締役2人のうちのひとりでもあった。取引の内容は伍稜総建が三重県紀北町で取得した採石権を利用してリミックスポイントと共同事業を行うというもの。それにあたり、伍稜総建はリミックスポイントに対し事業資金2億円を融資するよう求めてきた。
國重氏は融資を大筋で了承し、根抵当権設定登記に必要な書類を伍稜総建に渡した。「次の日に取締役会があり、そこで融資を正式に決議する予定だったが、登記所が閉まってしまうということで、先に書類を渡した」と、國重氏は当時の状況を説明する。登記がなされたのは1月25日付。根抵当権の極度額は4億円で、共同事業契約に基づく設定日は昨年4月1日付とされた。なぜ日付がバックデートされたのかは、國重氏でもわからないという。