経済ニュース番組『ワールドビジネスサテライト』(テレビ東京)で、ワタミが「ワタミ隠し」によって業績回復を試みていると報道したことが、インターネット上で話題になっている。
ワタミの2016年4~9月期の売上高が15年ぶりに前年を上回り、通期予想では1億円の黒字転換を果たせそうだという“いい感じのニュース”として報道されるはずの題材だったのだが、清水邦晃社長が登場したテレビ画面には「“ワタミ隠し”で業績回復?」というテロップがしっかりと映し出されていた。
ワタミでは売上低下が著しい店舗群をつぎつぎと業態転換し、別名称・別形態の飲食店へと切り替えていった。それによって、清水社長が「前の和民の倍くらい売れている手ごたえを感じている」ほどに、新業態店の業績がよくなっている。
業態転換は飲食店グループでは非常によく行われる業績改善の手法なのだが、同番組は店舗名から「ワタミ」ないしは「和民」の文字を隠したことで、ワタミグループだと知らない客が数多く足を運んでいるのではないかと報道した。
実際、ワタミグループの店舗ブランドには、いつの間にか「ワタミ」が名前につかない業態店が増え、そのようなブランドが20を超えるまでの状況になっている。ワタミの名を隠した店舗を増やしたら実際に客足が戻ったわけで、その意味で「ワタミ隠し」と「業績回復」は無関係なわけではないだろう。
ワタミは新入社員を過労死させたことで社会的なバッシングを受けてきた。その時期に、社員が過労死するほどまでに働かなければいけない企業風土を築きあげた創業者の渡邉美樹オーナーが政界へと転じ、バッシングで業績悪化したワタミについて「僕が経営していたら、こんなことにならなかった」などと発言し、世の中のワタミ叩きに油を注ぐ結果になった。
ワタミブランドの毀損は、こうして不祥事の発覚に始まり、ワタミの社風を嫌う風潮と、渡邉オーナーを嫌う風潮によって後戻りできないほどに進んだ。
一番良いゴールとは?
では、このように企業がブランドを隠すことで再生するというのは最善の策なのだろうか。
この問いに答えるのは簡単ではないが、手掛かりとしては「ワタミにどうなってほしいと当事者が考えるか」を考えることで、良策なのか愚策なのかが判断できるようになる。
渡邉氏を嫌いだという人の視点で「ワタミなど潰れてしまえ」と思うのは勝手だが、当事者は渡邉氏だけではない。社員、経営者、取引先、そして顧客も当事者だ。なかでも社員や取引先のように弱い立場の当事者にとって、会社が潰れてしまうのは最悪の事態だろう。