サラリーマンの生涯年収は2億円から3億円といわれている。
この生涯賃金が増えることはなかなかなさそうだが、日本人の平均寿命は着実に伸びている。終身雇用が当たり前という時代も終わり、今の生活やリタイア後の生活が安泰という保証はない。
そこで、自分や家族の人生を守ってくれるのは、やはりお金だ。
『30代からの仕事に使える「お金」の考え方』(児玉尚彦・上野一也著、筑摩書房刊)は、なぜお金で考える必要があるのかから解説し、仕事とは直接関係なくても、実際のビジネスの現場で使えるレベルのキャッシュフローの考え方を紹介する一冊である。
■30代からのお金管理は「人生の大きな買い物」をなあなあにしないことが大事
「預金残高が現在いくらあるのか」
「前月いくら収入があり、いくら支出したのか」
「年間の収支がどのくらいプラスなのかマイナスなのか」
これらのことをしっかりと把握しているだろうか。
お金と向き合うために、まずやるべきことは、お金の動きをモニタリングすることだと著者は述べる。自分の貯蓄状況や普段の消費傾向を分析して改善策を打つことが大切だ。
また、人生における大きな買い物として「家」「車」「保険」の3つがあるが、この3大支出をおさえると、長い人生におけるお金に余裕が出てくる。
日常生活費では10円でも安いものを買おうとするのに、高額な買い物になると、急にどんぶり勘定になる人は少なくない。これは桁数が多い計算に慣れていないため、面倒くさい計算を頭が避けたがるからだ。
だから、気がつかないうちに余計なお金まで払わされていることもある。そうならないためにも、大きな買い物をするときには、あらゆる情報を仕入れ、ケースを考え、長期的な支出総額を計算してから、購入を決定するようにしなければいけない。
この3大支出に共通しているのが、「契約」による長期的な支出の固定化である。
著者は、契約の怖いところについて、お金を支払う側にとって不利な条件がわかりにくい点と一度締結すると変更しづらい点をあげる。
難解な法律と面倒な手続きから逃げようとすると、やはりお金で損をするようになっているのだ。
ここはわかったふりをせず、わからないことは専門家に聞き、納得がいかなければ契約は保留にしておくのがよいだろう。
また、すでに契約してしまったものは、毎年定期的に内容を見直して、他の契約と比較検討しよう。
支払時のお金について注意するだけでなく、その後の契約の見直しを毎年忘れずにすることにより、生涯にわたる支出総額を確実に節約することができるのだ。